中国の国有「鉄道会社」過去最悪の赤字額の深刻 新型コロナ流行と旅客量の大幅減少が大打撃

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2020年の国鉄集団の通期決算は過去最悪の赤字額だった(写真はイメージ)

中国の国有鉄道会社の中国国家鉄路集団(国鉄集団)は4月30日夜、2020年の通期決算を発表した。それによれば、総売上高は前年比8.1%減の1兆600億元(約17兆8610億円)で、純損益は2019年の25億7400万元(約434億円)の黒字から、2020年は555億600万元(約9353億円)の赤字に転落した。この赤字額は2013年の同社設立以降で最悪だ。

巨額の赤字となった主な原因は、新型コロナウイルスの大流行とそれに伴う旅客量の大幅減少だ。国鉄集団の旅客輸送人員は新型コロナの感染が拡大した2020年2月から急速に減少し、同月はのべ3674万人に落ち込んだ。同年3月以降、旅客輸送人員は前月比で増え始めるも、2020年通期では、のべ21億6600万人にとどまり、前年比39.4%減となった。

なお2020年の中国全土の鉄道貨物輸送量は、トラック輸送から鉄道輸送へのシフトを進める政府の「公転鉄政策」や国鉄集団自身が定めた、旅客不足を貨物で補う「以貨補客」などの対策により、前年比で4.1%増加し35億8000万トンとなったが、それでも旅客輸送と合わせた鉄道輸送全体の売上高減少の勢いを止めるには至らなかった。

21年1~3月期は売上高も回復

一方で同日に発表された、2021年1~3月期決算は、売上高が前年同期比19.6%増の2270億1700万元(約3兆8252億円)だった。2021年に入ってから、新型コロナの局所的流行の封じ込めと物流市場の回復で、国鉄集団の売上高も前年同期比で右肩上がりに転じた格好だ。純損益は408億1100万元(約6877億円)の赤字だったが、赤字額は前年同期に比べ33.15%縮小した。

本記事は「財新」の提供記事です

なお、国鉄集団の四半期決算では1~3月期の純損益が例年赤字になっている。同社は公益輸送の役割を担っているため、運営コストは売上高をはるかに上回る。通常、1~3月期から7~9月期までは赤字経営で、年の最後の10~12月期に国から支給される公益輸送補助金で赤字を埋め合わせていた。

ただ現時点では、鉄道の旅客輸送人員は新型コロナ前のレベルに戻っていない。国鉄集団の公式サイトのデータによると、1~3月の旅客輸送人員は、のべ5億2900万人で、前年同期比40%増だったが、2019年の同時期と比較すると63%のレベルにとどまっている。

(財新記者:白宇潔)
※原文の配信は5月1日

財新 Biz&Tech

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