細谷:国際秩序が構造的変化を起こしている現在、日本のとるべき戦略を私なりに考える前に、かつての国際秩序の構造的変化の時代に日本がこれまでどのように対応してきたのか、歴史的に振り返ってみたいと思います。
第1次世界大戦後、ファシズムが台頭し国際秩序が変動したとき、日本はファシズム勢力の側に与して、米英両国を敵国として戦争をしてしまいました。つまり、国際秩序が変動したときに、日本はその潮流を見誤って国を滅ぼし、国益を大きく損ねたのです。
冷戦終結後の国際秩序の変動にも、日本はうまく対応できませんでした。冷戦時代の思考から抜け出すことができず、日米同盟に安住し、意図的な不作為、つまりあえて何も行動しないことが平和であるというような思考回路にとどまっていました。
それを変えたのが、カンボジアのPKOへの自衛隊の派遣を端緒とする国際平和協力活動への参加の拡大で、最終的には安倍政権の安保法制改定に至りました。ここまで来るのに、冷戦終結から20年もの年月を費やしたのです。
つまり、戦前も戦後も、国際秩序の大きな変動に際して迅速かつ適切に対応できず、いわばその「敗者」であり続けたのが日本の歴史です。戦前の対応は迅速でしたが適切ではなく、戦後のそれはあまりにも遅い対応でした。
幻想からの脱却
その日本が、現在進行形で、さらにこれから加速していくことが予想される国際秩序の巨大な構造変化に、うまく対応するには次のような2つのことがぜひ必要だと考えます。
1つは、戦後の平和主義的幻想からの脱却であり、そしてもう1つは安全保障戦略と経済戦略、さらには気候変動問題やデジタル戦略など、喫緊の課題に対応する戦略を統合するレビューの策定です。
戦後の日本の平和主義は、平時と戦時を明確に区別し、憲法9条で戦争を放棄しているのだから「戦時」はありえないという、いわば「フィクション」の世界の中で生きてきました。
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