今後はこれまで以上に、尖閣諸島にしても台湾にしても朝鮮半島にしても対中地経学競争にしても、不測の事態が起こった際、日米同盟を活用して危機を乗り切ることができるかどうか、それとも同盟を活用できずに危機を深めるか、同盟経営の出来不出来がカギとなるでしょう。“頭越し”“約束違反”“抜け駆け”“安保タダ乗り””アメリカ抜きのアジア” “当事者能力欠如”のリスクを日本は頭に入れておかなくてはなりません。これまで以上に日米同盟に対する逆風が各方面から吹いてくる可能性も心しておくべきです。
1つは、中国による日米分断圧力の強まりです。中国が日米同盟を“立ち枯れさせたい”と望んでいることは明白です。中国から見れば、NATOや日米同盟は「冷戦時代の残滓」であり、国際社会の不安定要因であり、西側の既得権益を守るための道具です。中国は日米欧を国連はじめ国際社会の「少数派」と位置づけ、中国や開発途上国などの「多数派」とことさらに対峙、対立させようとしています。一昔前の「第一世界」対「第三世界」、ひいては南北問題を再現させようとしているかに見えます。
根本的対立の認識が必要だ
それに対して、日米は日米同盟もNATOも戦後の「自由で開かれた国際秩序」を支えてきた防衛基盤であり、北だろうが南だろうが今後とも安定作用と抑止力を持ちうる国際的公共財であるとみなしています。これをめぐって根本的対立があることをわれわれはしっかりと認識しておかなくてはなりません。
かつては、例えばニクソン訪中の時代には、中ソ関係が険悪化していたこともあり、アメリカは中国に対して、ソ連に対する「共同戦線論」、あるいは、日本が再び、暴走するのを防ぐための「瓶のふた論」といった日米同盟の“効用”をささやくことができました。今は違います。中国はこのところ、日米同盟下の日本に対して「アメリカの走狗(そうく)」という言い方をするようになっています。その昔、日米安保条約を締結した岸政権以降、文革の時代まで、日本などのアメリカの同盟国に対して使われた言葉が復活しています。
日米同盟が盤石であることを日米は中国に示していくことが肝心です。日米が安定してこそ、日中も米中も安定するような日米中三角関係を目指すべきです。一言で言えば、対中抑止力を柔軟に維持し、中国にそれを理解させるということです。
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