「学校にカネを積む人」を笑えない親たちの実態 世界で過熱する教育の“不都合な真実"

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ドラマや映画で暴かれる富裕層の桁外れの不正について、一般視聴者は気持ちのよさも覚えるかもしれない。しかし、ここまで極端ではないにせよ、子の教育をめぐって不安をあおられる現状は、日本の親たちにも他人事ではないのではないか。

背景にある2つの格差

このように親が競争に翻弄される様子が描かれる背景には、2つの大きな格差があると筆者は考えている。

1つ目は、事件化するような不正がなくとも、「出身階層が高いほど、子どもの教育で有利になる」という現象は、世界的に起こっているということ。親の学歴や収入が高いほど、子どもの学力や教育達成が高くなりがちだということは、世界の多くの国で確認される。

たとえば、PISAの調査でも、その一端が浮かび上がってくる。OECD平均で、親の階層が高い子どもの17.4%が読解力テストでの成績が最も高いグループに入っているのに対し、階層が低い子どもでは2.9%にとどまる。

日本でも、教育と格差の問題は2000年ごろからよく取り沙汰されるようになり、多くの教育社会学の研究者たちの関心事となってきた。

松岡亮二『教育格差』(2019年)も、親が塾や家庭教師など外部のサービスを使おうと考える志向は1995年には大卒と非大卒で差がなかったが、2000年代以降は大卒層がより積極的になっているなどの傾向を指摘。ただし、親の学歴など生まれた家庭の環境によって子どもが到達する学歴に格差があり、これは戦後ずっと存在すると述べる。

この大きなトレンドは変わらない中で、近年「階層の再生産」議論はより細部に入り込んだ検討がされるようになっている。

たとえば荒牧草平『学歴の階層差はなぜ生まれるか』(2016年)は子どもの進路選択について、親の階層そのものや経済力から学校外教育への投資が直接影響しているのではなく、地位や資源の影響を受けて形成される親の「教育期待」が差を生みだしていると指摘している。

教育社会学者らがこのような調査研究をするのは“階層の再生産”に警鐘を鳴らすためであり、また必ずこうすれば成功するといったものではないのだが、研究者の意に反してこのようなデータや分析結果は、親の焦燥感をますますあおってしまうかもしれない。

もう1つの格差は、階層の再生産が起こっているにもかかわらず、富裕層や中間層の親がその子どもの地位をより確実なものにしようと躍起になる背景として、大学に入る層が拡大する中で「差異化」を目指そうとすること、そして社会の格差がますます開く中で中流階層(ミドルクラス)が脱落を恐れるからだと考えられる。

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