アメリカ経済に表れ始めた「ほころび」の深刻度 ピクテの市川眞一氏に超大国の進路を聞く

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――アマゾンのジェフ・ベゾスCEOが法人税率引き上げを支持しているのは、分割論議への思惑もあるのでしょうか。

それよりも彼は民主党支持者であるし、格差拡大がトランプ現象や欧州の極右、ポピュリズムを助長し、暴力的対立も深まる中、「持てる者」として危機感を感じるのは当然だ。所得再分配を通じて格差是正を図る必要があり、企業もコストを払うべきだと考えているのだろう。

リーマンショック後の約10年間、主要国は法人税の引き下げ合戦を演じた。いちばん下げたのがアメリカで、実効税率は13.44%ポイント低下した。その中で儲け過ぎの批判が起こっており、社会の安定を維持するためにそれなりのコストを負担しようという動きなのではないか。

トランプ再登場はバイデン次第

――2024年の大統領選についてはどう見ますか。

共和党の候補は何人かいるが、トランプ氏もその一人。ただ、権力を失ったトランプ氏が輝くか過去の人になるかは、現在権力を握っているバイデン大統領がうまくやるかにかかっている。バイデン氏がしくじって景気が悪化したり、所得格差を止められなかったりすれば、トランプ時代のほうがよかったと思う国民が増え、トランプ氏が有力候補となる。

逆にバイデン氏がうまくやってトランプ氏が過去の人になれば、共和党ではニッキー・ヘイリー元国連大使らが浮上しよう。ペンス前副大統領の可能性もあるが、同氏はトランプ氏の印象が強すぎる。

民主党側は、普通ならバイデン氏が再選を狙うところだが、年齢的に難しいとなればカマラ・ハリス副大統領が最右翼だろう。ハリス氏は特に若い人の間で人気が高い。左派ではなく中道派であることも強みになる。

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