アメリカ経済に表れ始めた「ほころび」の深刻度 ピクテの市川眞一氏に超大国の進路を聞く

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市川眞一(いちかわ・しんいち)/ピクテ投信投資顧問シニア・フェロー。日系証券の系列投信会社ファンドマネージャーなどを経て、1994年以降、フランス系、スイス系の2つの証券会社でストラテジストを務める。この間、内閣官房構造改革特区評価委員、規制・制度改革推進委員会委員、行政刷新会議事業仕分け評価者など公職を多数歴任。2019年から現職(写真:ピクテ投信投資顧問提供)

――適度な調整といったところでしょうか。

減速はむしろ健全といえる。政治的にも景気は大きな意味を持つ。戦後、再選を目指した大統領は11人いるが、再選に成功した7人の場合、選挙の年と前年の経済はプラス成長だった。一方、トランプ氏を含め再選に失敗した4人の場合、そのどちらかの年がマイナス成長だった。

バイデン氏が2024年に再選を狙うのであれば、その年と前年の景気が重要になる。最も避けるべきは、株がバブル化し、2023~2024年に破裂して景気が悪化すること。そのため、長期金利の上昇でバブル化を抑制しながら財政の正常化を図ろうというのが現政権のスタンスだろう。

――インフラ投資法案だけが通って、増税が後回しになることで景気が過熱する可能性はありませんか。

もしそうなれば長期金利が上昇するだろう。それが景気の自然調節機能を果たす。FRBのパウエル議長も「長期金利の上昇によって株価が秩序を持って調整されるのは正しい」と述べている。この点、日本の場合は金融政策で長期金利を制御しているため自然調節機能が働かない。

財政赤字の吸収にもインフレが必要

――サマーズ元財務長官らは空前の財政刺激によるインフレ加速を警告しています。

その可能性はあるとは思う。ただ逆に言えば、アメリカはある程度のインフレが必要な状況にある。財政赤字がGDP比で第2次世界大戦期と同程度になっており、ある程度インフレ率が高い状態が続き、名目のGDPを上げて赤字を吸収していかないと軟着陸できなくなる。国民生活が立ち行かなくなるような状況は避けつつも、ある程度のインフレは容認する方向だろう。

――FRBの政策の見通しは。

量的緩和の規模を減らしていくプロセスには年内に入っていくのではないか。だが、利上げは難しいだろう。今年を通して物価が2%を超えた状態が続くのであれば、来年に利上げを検討することになろう。

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