初心者でも予習は不要!「江戸落語」の楽しみ方 寄席は「晴れた休日の昼間」がオススメなワケ

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石井 「対面の芸事は本当にすごいと思います。プレイヤーの方も感情が出てくるし、お客様の雰囲気によって乗せられることももちろんあるでしょうし、逆も然りかもしれませんが」

正蔵 「それ、間違いなくありますね。ただ、今はコロナ禍でお客様の笑い声が抑えられていたり、マスクで表情が見えづらくなったりすることで、演者のモチベーションが下がるかというと、決してそういうことはないんです。むしろ、こんなときに来ていただいているお客様に何が届けられるだろうと考えて高座に臨んでいるので、集中力が増しますね」

石井 「それはすばらしい!」

田中 「最近はYoutubeなんかの配信でやる場合もあるけど、あれはリアクションが全然わからないし、つらいだろうなって思っていましたが」

(写真:トヨダリョウ)

正蔵 「そんなことないですね。私も何回かライブ配信しましたけど、画面の向こうで見ている人がいるっていうのがわかっているので。全国各地で落語を聞きたいけど来られない人が聞いてくれているんだって思ったらモチベーションは逆に上がりますね。まあ、ちょっとひねくれてるのかもしれないけど」

石井・田中 「ワハハ!」

正蔵 「でも、カッコつけて言っているわけじゃないんです。反骨っていうんですかね。噺家は皆、へそ曲がりなんですよ。じゃなきゃ噺家やってないですから(笑)」

【ポイント】
■落語には噺家がどう生きてきたか、何をよしとしているかがそのまま出る
■人情話『芝浜』のおかみさんは、噺家の理想の女性像

古典落語はジャズに似ている?

(写真:トヨダリョウ)

石井 「今日のお話を聞いていると、落語は本当にジャズみたいだなと思いました。正蔵師匠はジャズがお好きなことでも有名ですが、即興性やバリエーションがあって、古典は演者によって色々なイメージに変わっていくというのはジャズと一緒。古典落語の楽しみ方とジャズの楽しみ方って、近いなってちょっと思って」

正蔵 「なるほど。ジャズなら、古典に匹敵するスタンダードナンバーってものがありますよね。それを演者がそれぞれにアドリブを入れて演奏していく。『ボディ・アンド・ソウル』とか『ラウンド・アバウト・ミッドナイト』、『枯葉』などのナンバーを、今日はトニー・ベネットで聴きたい、いやフランク・シナトラがいい、といった風にプレイヤーごとに聞きたくなるものですよね」

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