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田中 「その日その日のお客様の気持ちを汲んで話を選ぶ必要があるという」
正蔵 「自分の押し付けで芸をしてはいけないんですね。空気を掴むことが大切なんです。若い時分は押し付けたくなってしまうんですけれど(笑)、私も最近は、お客さんと自分の間のうまいところを抜けて行こうという考え方をするようになりました」
石井 「そういうことも含めて、聞きに行く方も初心者なら、晴れた土・日・祝の昼間にやる寄席へ行くというのがベストなんですね!」
田中 「そういうこと!」
正蔵 「それと、もうひとつ。落語は“つっかけ”といって、普段着の芸ですから気軽に聞きに来てほしいんです。歌舞伎などは“よそゆき”の芸で、スーツや着物を着て見に行く楽しみがあったり、かしこまったものじゃないですか」
石井 「確かに」
正蔵 「入場料だって、落語と歌舞伎では全然違いますし(笑)、落語で1万円以上取るなんてことはまずありません。寄席なんか映画の料金と同じぐらいですから、そういう感覚で、好きな噺家だけ聞いて帰るもよし、最初から最後まで聞くもよし。落語は自由な芸であり、それこそが魅力です。見た後に、あ~楽しかった! って帰っていいただけたら、最高だなって思いますね」
石井 「寄席ではどんなところに注目すると面白く聞けるんでしょう?」
田中 「登場人物が面白いよね。落語に出てくるのって、とんでもない奴ばっかりで。バカだったり、博打に明け暮れたり、盗人だったり」
正蔵 「おっしゃるとおりで、落語にはダメな人しか出てきません。とにかく、全~部ダメ!(笑)。仕事は失敗するし、もめ事に巻き込まれるし、泥棒に入られるし、何かしらトラブルになっちゃう。そういうダメな人ばっかり出てくるのに、聞いてて面白いし、気持ちがいいんですよ」
田中 「本当にそうですね」
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