一方の「からくり」に、“そぎ落とし”はなかった
一方、「加トちゃんケンちゃんごきげんテレビ」の企画部分を受けついだ「さんまのスーパーからくりTV」は、素人の面白さを存分に生かした番組として人気を博しましたが、やはり、AFVのような思いきったそぎ落としはしませんでした。前出の①プロが考えた「企画もの」、②司会以外のプロの出演者、の2つを引き継いだのです。
出演者は、司会者のさんまさんに加え、スタジオには何人もの有名タレント。そしてロケにもタレント。さらに、次から次へと企画モノを考えて、セットをつくり、ロケをして、「加トちゃんケンちゃんごきげんテレビ」ほどではないものの、おカネがかかっているのがわかりました。
そして、素人が投稿するビデオレターや、素人がロケで質問に答えるビデオにも、プロの手が入っていることがわかりました。元のネタはもちろん素人さんですが、それを面白く表現したり、時間内にまとめたりするのに、その場で演出が入っているのが随所で感じられました。これが予定調和を生み、「マンネリ化」を招いてしまったのです。
当然のことながら、多数の出演者への出演料(しかも皆さん、芸歴の長い方々)と企画モノの制作費などで、番組制作費は膨らみ、視聴率が高い間はいいけれど、低迷すると打ち切りという結果になってしまったのではないかと思います。
本家のTBSの2番組と、アメリカ版を比較すれば、日本の番組は作り手側の思いや都合が色濃く反映されているように思います。顧客主義というよりは、作り手主義。「ゴールデンなのだからこのぐらいおカネをかけなくては」「プロなのだから面白い企画で勝負せねば」「このレベルの面白さではテレビでは放送できない」など、企画と演出と出演者がてんこ盛りに詰め込まれた豪華幕の内弁当みたいになってしまったのです。
一方、AFVは、プロが作る予定調和的な番組に限界があることを知っていて、中身をすべて視聴者に任せたのです。それは、グーグルなど、ネット企業の発想にとても似ています。
「アメリカズ」というタイトルもアメリカ人全員が参加できる番組であることを象徴的に表しています。現在でも週に2000ビデオが投稿されるとのことですから、ネタは無限大にあります。そして、できるかぎりおカネのかからないフォーマットを考え尽くした。おカネをどんと使うのは視聴者への賞金です(1分のビデオで1000万円。これはやる気になりますね)。いわば、幕の内弁当ではなく、最初から飽きのこない「のり弁当」。スタバで言えば「ダーク モカ チップ クリーム フラペチーノ」ではなく「ドリップコーヒー」を狙ったのです。それが25年も続いた秘訣ではないかと思います。
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