TBSの「加トちゃんケンちゃんごきげんテレビ」のアメリカ版を放送しようとした際、プロデューサーのヴィン・ディボナ氏は、次の2つの「要らないものをそぎ落とす」という作業を行ったといいます。
TBSの番組は、バブル期に制作されただけあって、大掛かりなロケ、多数のエキストラ、高額なセットなど、とにかくおカネがかかっているのが、画面を一目見るだけでわかりました。しかし、ディボナ氏は、華やかな企画モノの部分は、予定調和な分、全然面白くないと思ったのです。
彼はアメリカのメディアの取材に「バラエティ部分は精彩に欠けていた。だから、視聴者投稿ビデオだけの番組を作ろうとスタッフに呼びかけた」と言っています。そして、彼が削ったのは、アナウンサーや俳優など、司会以外のプロの出演者です。
結果、どんな番組になったかというと、スタジオに司会者はひとり。あとは観覧者とビデオの投稿者だけです。そして、スタジオと投稿ビデオが交互に出てくるという何ともシンプルな構成です。クイズを挟みますが、クイズを回答するのは、タレントではなく、観覧者です。最後に優秀ビデオが選ばれ、賞金が出ます。
そして驚くことに、このフォーマットは25年間、変わっていないのです。変わったのは、司会者(ボブ・サゲット氏からトム・バージェロン氏)、賞金額が高騰したこと(現在は1000万円)、そして、You Tubeなどネットと連動していることぐらいです。
もちろん25年も続けば、かつてのような視聴率は獲得していませんが、それでも今のところ打ち切りのうわさは聞こえてきません。裏にスポーツ関係の特番がないかぎり、同時間帯の視聴率1位をキープしていますし、この番組の制作費は、あまりにも安いため、十分に元が取れているからです。
司会者ひとり分の出演料、スタジオ収録費、スタッフ費、賞金などしかかかりません。観覧者にギャラは出ないだろうし、ビデオもタダで投稿してもらっています。
最初からできるだけフォーマットをシンプルにしながらも、予定調和にならない内容にして、安く制作したことが、勝因といえそうです。
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