顧客がハマる「熱狂のブランド」を生み出す秘訣 「カルトブランド」という新時代の手法

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しかし、よくよく考えれば決して矛盾してはいない。なぜなら、カルトブランドの存在理由、つまりイデオロギーに共感して信者となった場合、ブランドの共通の目的を追い求めることとなり、その過程で信者は幸福を感じることができるからである。

敵を設定することで、ブランドは戦う姿勢を顧客に示すことができる。顧客はいつしかブランドに自分を重ね合わせ、応援する。その戦いに部分的に勝利する、もしくは勝利へと近づいたとき、顧客のエンゲージメントは一気に高まる。

競合他社をあからさまに敵に設定することは、今の時代難しくなっているかもしれない。しかし、敵は何も企業やブランドでなくともいい。世の中の大半の企業が、ミッションを設定しているであろう。このミッションが具体的なものであれば、「敵」を生み出すことができる。例えば環境破壊や言論封殺なども「敵」として考えられよう。

アメリカのコーヒーブランド「デス・ウィッシュ・コーヒー」のプロダクトは、フェアトレードとオーガニックをうたっている。見方を変えると、不公平かつ不公正な貿易、そして農薬や化学肥料を使う世界を敵に設定しているといえる。顧客が共感し、その戦いを応援したくなるような、何かしらの「敵」を設定することが重要なのである。

「敵」や「戦い」を設定する際は、ストーリーを用いることが一般的である。世の中をよくするための「共通の敵」を見つけ、「問題・原理・原因」を明らかにすることで、戦いに勝利しよう、とのメッセージを届ける。この一連の流れをストーリーテリングコンテンツとしてまとめることで、オーディエンスの統一が可能となる。敵を作り、戦いを生むことで、あらゆる層にリーチできるのだ。

「象徴」としてのポジションと行動

ブランドを象徴とみなす考えがある。カルトブランディングにおいても、象徴は不可欠な要素だ。象徴を2つに分類してみよう。

まず、「○○の象徴」のように、何かのシンボルとしてのポジションを意味するものである。「反体制の象徴」「平和の象徴」「若者文化の象徴」など、象徴という語句はさまざまな使われ方をする。

象徴としてのポジションを獲得したとき、ブランドは関係する文化や業界におけるシンボル、もしくはアイコンのような存在に昇華する。メディアに取り上げられることも増え、ブランドの認知度は一気に高まる。信者獲得のハードルも下がる。

先述の「異端児」としてのポジションを獲得した結果、ブランドが何かの象徴となる可能性が出てくる。もちろん、ブランドの文化とひも付く分野における象徴であり、ブランドにとってメリットはあまりにも大きい。

次に、カルトブランド自身、もしくは信者がとる象徴的な行動を意味するものである。カルトブランドは、自らの理念や思想を広めることに力を注ぎがちだ。しかし、伝えることに注力したところで、人は話を聞いてくれない。

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