アメリカの復活には「中国の脅威」が必要な理由

神話が支える「暫定協定」で分断や対立を超える

バイデン政権の国務長官として来日したブリンケン氏(左)。公聴会に出席した際、トランプの外交政策は対中関係に関する限り正しいと明言した(写真:Bloomberg)
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内外で議論の最先端となっている文献を基点として、これから世界で起きること、すでに起こっているにもかかわらず日本ではまだ認識が薄いテーマを、中野剛志(評論家)、佐藤健志(評論家・作家)、施光恒(九州大学大学院教授)、柴山桂太(京都大学大学院准教授)の気鋭の論客4名が読み解き、議論する「令和の新教養」シリーズ。
前回に引き続き、トランプ政権の外交基盤となり、アメリカ保守主義再編や欧州ポピュリズムにも大きな影響を与えたといわれるヨラム・ハゾニー氏の新刊『ナショナリズムの美徳』を中心に、国民国家、ナショナリズム、リベラリズムについて徹底討議する。

反グローバリズムの危険な顛末

佐藤:アメリカの現状から浮かび上がるのは、「ナショナリズムかグローバリズムか」という図式で物事を考えることがもはや不適切だということです。2020年の大統領選挙は、ナショナリズムを唱えたトランプの敗北に終わりましたが、だからといってグローバリズム、ないしグローバリストが勝利したわけではない。

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大統領就任演説でジョー・バイデンが強調したのは国民統合です。「アメリカの物語」を一緒に作ろうと呼びかけたのです。現時点で断定はできませんが、過去の民主党政権のようにグローバリズムを推進することはない(あるいはできない)でしょう。

ところが、いま起こっていることはナショナリズムへの回帰でもない。主観的にはナショナリストだと思っている人たちが、ナショナリズムの名において、自国の国民統合を破壊する振る舞いをしているのです。端的な例は、1月に起きたトランプ支持者の議会襲撃。あれはアメリカというネイションの正統性を否定するものと評さねばなりません。

この問題はどのように捉えればよいか。実はこれもヨラム・ハゾニーの議論、より正しくは彼の議論にひそむ矛盾から説明できます。

ナショナリズムの美徳』で、ハゾニーは国民国家を「帝国」の反対概念と位置づける。ネイションの枠を尊重するか、それを越えた覇権を目指すかの違いです。で、国民国家の長所として、帝国主義的な征服に価値を見出さないことを挙げました(同書第14章)。

しかるにハゾニーは同じ章、それもわずか9ページ後の箇所で、国民国家であったはずのヨーロッパ列強が、アジアやアメリカ、アフリカの人々を征服するという点では帝国主義的だったと述べています。ならば国民国家であることと帝国であることは対極に位置するどころか、何の矛盾もなく両立すると見なければならない。

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