アメリカの復活には「中国の脅威」が必要な理由 神話が支える「暫定協定」で分断や対立を超える

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佐藤:ハゾニーはグローバリズムも帝国主義の一種と規定します。するとナショナリズムはグローバリズム的要素を含んでおり、両者の明確な区分は不可能という話にならざるをえない。さすがにまずいと思ったか、この二面性は「驚愕すべき」(原文では「ぎょっとさせられる」)ことだなどと書いていますが、驚愕しようがしまいが現実は否定できません。

これから世界で起きること、すでに起こっているにもかかわらず日本ではまだ認識が薄いテーマを、気鋭の論客が読み解き、議論します。この連載の記事一覧はこちら

19世紀イギリスの名宰相ベンジャミン・ディズレーリは、労働者階級の利益のためにも帝国主義が必要だと主張しました。ネイションの福利を最大化したければ、国民国家は世界規模の覇権を追求すべきだと説いたのです。ディズレーリがキリスト教に改宗したユダヤ人なのにいたっては、ほとんどできすぎの感がありますね。

ナショナリストは「部族主義」に走る

現代でも事情はさして変わりません。先進国同士は、互いに相手を自由なネイションとして尊重するか、とりあえずそのふりをします。ただし先進国のレベルに達していないと見なした国に対しては、平気で帝国主義的な態度を取る。国民国家か帝国かというハゾニーの二分法は、観念としてはともかく、現実には成り立たないのです。

佐藤 健志(さとう けんじ)/評論家、作家。1966年、東京都生まれ。東京大学教養学部卒業。1990年代以来、作劇術の観点で時代や社会を分析する評論活動を展開。『平和主義は貧困への道』(KKベストセラーズ)など著書多数。オンライン講座に『痛快! 戦後ニッポンの正体』(経営科学出版)、『佐藤健志のニッポン崩壊の研究』(同)がある(写真:佐藤健志)

ゆえに「アメリカ・ファースト」というトランプ式のナショナリズムも、すぐジレンマにぶつかる。ディズレーリにならえば、アメリカというネイションの福利を最大化するためにも、グローバリズムは無視できないのです。しかしハゾニー的な二分法を信じるトランプ支持者にとって、これはまことに都合が悪い。彼らの視点に立つかぎり、ネイションがグローバリストに乗っとられているとしか見えないでしょう。

このジレンマをどう解決するか。既存のネイションは信用できない以上、「グローバリズムを全否定できるネイション」の存在を新たに想定、ないし夢想するしかない。

それはアメリカというネイションより小規模になりますが、「トランプ派のネイション」と言ってもいいし、ハゾニーの議論を踏まえて、ネイションの下位集団、トライブ(部族)と規定することもできます。ナショナリズムを信奉しているつもりのトライブが、ナショナリズムの名のもとネイションを壊しにかかった、これが議会襲撃事件のメカニズムです。

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