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ライフ #日本資本主義の父 渋沢栄一とは何者か

百戦錬磨の渋沢栄一が「大久保利通は嫌い」な訳 大蔵省では意見が対立して退官、実業家の道へ

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  • 真山 知幸 伝記作家、偉人研究家、芸術修士(MFA)
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大久保のことを嫌ったのは、何も渋沢だけではない。

大久保は冷徹なイメージが強く、どちらかといえば、不人気な政治家である。リアリストという点では、渋沢と共通点があったものの、渋沢が「陽」だったのに対して、大久保は「陰」だった。

もちろん、陰陽と異なる性格がゆえに、バランスがとれることもある。大久保と西郷隆盛がまさにそうだが、渋沢と大久保の場合は、タイプの違いが裏目に出てしまったようだ。

ならば、西郷と渋沢は「陽同士」で相性がよかったのだろうか。

忘れられない西郷の言葉

渋沢にとって、忘れられない西郷の言葉があった。それは、各省の権限について、評議会を開いたときのことだ。首脳を務めたのが、大久保、木戸孝允、そして西郷だった。

話題が朝廷の権限にまで及んだときに「三条実美や岩倉具視にも出席してもらったほうがよかろう」という話になった。

「三条太政大臣、岩倉右大臣にも出席してもらうようにするか」

木戸がそう提案がすると、西郷は唐突にこうつぶやいた。

「まだ戦争が足りないようにごわすね」

まだ戦争が足りない――。西郷は何を言っているのだろうと、その場の者は誰も理解ができなかった。渋沢も西郷のことをこう思ったのだという。

「西郷は少しウツケだな」

ウツケとはぼんやりした愚か者、ということ。それくらい、西郷の発言は意味不明で、場違いのものであった。

だが、しばらくして、西郷の言葉に込められた真意を知り、渋沢はその深遠な見通しに驚愕することになるのである。

(文中敬称略、番外編第2回へつづく)

【参考文献】
渋沢栄一、守屋淳『現代語訳論語と算盤』(ちくま新書)
渋沢栄一『青淵論叢道徳経済合一説』(講談社学術文庫)
幸田露伴『渋沢栄一伝』(岩波文庫)
木村昌人『渋沢栄一――日本のインフラを創った民間経済の巨人』(ちくま新書)
橘木俊詔『渋沢栄一』(平凡社新書)
鹿島茂『渋沢栄一(上・下)』(文春文庫)
渋澤健『渋沢栄一100の訓言』(日経ビジネス人文庫)
岩井善弘、齊藤聡『先人たちに学ぶマネジメント』(ミネルヴァ書房)

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