凄すぎて渋沢栄一も戸惑った「西郷隆盛の眼力」 大久保利通と同様に「底知れない男」と実感

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渋沢栄一と西郷隆盛のエピソードをお届けします(左写真:今井康一、右写真:Caito/PIXTA)
私が嫌いだった人――。大蔵省に出仕していた渋沢栄一は、明治政府の中心的人物、大久保利通をそう言って敬遠しながらも、「大久保が君子たる器だからこそ、その底知れなさを自分は恐れたのだ」と、のちに回想している(百戦錬磨の渋沢栄一が「大久保利通は嫌い」な訳)。では、大久保の盟友である西郷隆盛は、渋沢にとってどんな存在だったのだろうか。前回に続いて、連載「渋沢栄一とは何者か」の番外編として、渋沢の人物評を紹介していきたい。

「お前はなかなか面白い」渋沢を気に入っていた西郷

渋沢が西郷と初めて対面したのは、一橋家の家臣だったときのこと。同じく一橋家家臣の平岡円四郎に密偵を命じられ、渋沢は相国寺の宿に泊まる西郷を訪ねている。2人は出会うや否や、攘夷運動や藩政改革などについて議論して、大いに盛り上がった。西郷は渋沢を気に入ったらしく、こんなことを言った。

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「お前はなかなか面白い男じゃ。食い詰めて仕方なく放浪しているのでなく、生活手段があってしかも志を立てたのは感心な心がけである。今後も時々遊びに来るがよい」

その後も何度か西郷を訪問した渋沢。豚鍋を2人でつついているうちに、西郷は「今のように天下が乱れては、皇室に対しても恐れ多い」と嘆き、「老中制度を廃止して、藩を代表する数人による新しい政治が必要だ」と熱弁した。

さらに、一橋家と徳川慶喜にも言及して、こう続けている。

「むろん一橋もその一員に加わって、座長になるがよい。そして根本的な国策を立てる以外に収拾の道はなかろう。ところで貴公の御主人だが、どうも慶喜公は腰が弱くていかん」

慶喜に仕えていた栄一は、この言葉に少しカチンと来たのか、西郷にこんな問いかけをしている。

「それならあなたがその中心人物になってはどうですか」

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