朝の社食に出没「妖精さん」はなぜ生まれたのか 「老後レス社会」に潜む日本型雇用のひずみ
(本記事で言う「高齢者」は65歳以上を指します。また登場する人物の年齢は取材時点のものです)
「妖精さん」は朝の社員食堂にいた
日本を代表する某大手メーカー。その関東地方にある拠点に「妖精さん」は“生息”していました。早朝の社員食堂に現われ、午前9時には姿を消してしまうといいます。生息の実態はどうなっているのか。そもそも、なぜ「妖精さん」なのか。“目撃者”の証言からたどってみましょう。
・タイムカードを切って社員食堂に移動
・コンビニで買った朝ごはんを食べたり、スポーツ新聞を読んだりして、1~2時間ほどゆったり過ごす
・他の社員が出社する9時が近づくと、静かに自席に戻っていく
つまり、朝の数時間しか姿を見ることができないことから「妖精さん」と名づけられたのです。そう、「妖精さん」の正体は、このメーカーに勤める「50代後半の働かないおじさん」でした。
では自席へ戻った「妖精さん」は日中、何をしているのでしょうか。
・パソコン操作は、人さし指だけの「一本指打法」
・上司も積極的に仕事を振らないため、パソコンの前で「フリーズ」
こんな調子です。かつて、こうした「働かないおじさん」たちは、「給料泥棒」とか「ごくつぶし」「無駄飯食い」と呼ばれていました。「妖精さん」は、かわいらしいネーミングとは裏腹に、やはり社内で疎まれる存在のようです。そして、その存在が“副作用”をもたらします。「妖精さん」に嫌気がさして退職する若手社員が続出するようになったのです。
このメーカーに10年近く勤め、IT企業に転職した人は、次のように話します。
「会社は彼らを解雇できないし、ほかに移すポジションもありません。『妖精さん』たちは仕事へのやる気もなく、ただ定年を待つだけ。若手はそれを見てフラストレーションがたまるのです」
「5年もすれば、みんないなくなると思っていたら、数年前に会社が60歳から65歳へと定年の延長を決めました。ああいうおじさんたちと、これ以上一緒に過ごせないと思ったんです」