ルネサス、工場火災で半導体不足に拍車の深刻 茨城・那珂工場で火災、1カ月以内の復旧目指す
自動車向け半導体世界3位のルネサスエレクトロニクス那珂工場(茨城県ひたちなか市)で3月19日未明、火災が発生し、一部の生産ラインが停止した。
ルネサスは21日に緊急会見を開き、柴田英利社長は「関係各所から協力をもらい、全力で復旧にあたる」と話し、1カ月以内の生産再開を目指すと表明した。火災影響のない仕掛品もあり、出荷は継続しているが、昨年末から続く車載半導体不足が一層深刻化するおそれがある。
火災があったのは大型の直径300ミリのウェハーを加工するラインだ。1階クリーンルーム内のメッキ工程に使う装置付近から出火し、約5時間半後に鎮火した。けが人はなかったが、計11台の半導体製造装置が焼損した。警察や消防による現場検証の結果、何らかの理由でメッキ装置への過電流が発生、周辺の樹脂に引火したという。
人海戦術で復旧作業
微細な電子回路を形成する半導体工場では、製造はクリーンルーム内で行われ、異物混入は厳しくチェックされる。生産再開には装置交換に加え、天井などについたすすを取り除く作業が必要となる。すでに取引先の自動車メーカーなどから50人規模の応援を受け入れ、「人海戦術」(ルネサス)で復旧作業に取り組んでいる。
台湾のTSMCなど外部のファウンドリー(受託生産会社)への生産委託が進んでいるとはいえ、火災があった工場はルネサスにとって主力の生産ラインだ。このラインで製造する製品は月商170億円規模。ルネサス全体の売り上げの3割弱に相当する。このうち66%が車載向けで、エンジン制御などに使うマイコンのほか、安全運転支援システム関連の半導体を多く作っている。
那珂工場は2011年の東日本大震災で被災し、トヨタ自動車などからの応援を受けて当初半年かかると言われた復旧を3カ月で成し遂げた。その後、事業継続計画(BCP)を見直し、製品を複数拠点で製造可能にするなどの取り組みを進めてきた。
それでも、ルネサスによると、被災した那珂工場のラインのうち3分の2はルネサスのほかのラインやファウンドリー(生産委託先)でも生産が可能だが、残りの3分の1は代替生産ができないという。
完成品在庫も逼迫している。2月に福島県沖で発生した地震の影響で那珂工場は一時生産を停止した。同工場はフル稼働で在庫水準を積み上げていたが、ルネサス関係者は「間が悪い」とうなだれる。
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