丸山:もしソニーが戦って、オモチャ屋に負けでもしたらかっこ悪い。だからみんないい顔をしない。それで、機関決定まで行かないわけだよね。機関決定のところまで持ち込めば、なんだかんだとなるけど、そこまで上がらない。
三宅:そうだったのですか。
丸山:それに、久夛良木はまだ課長だったからね。課長の上に部長がいて、本部長がいて、取締役がいて、と当時CEOだった大賀典雄さんまでに何層もある。それを説得するのは大変だろ。
ところが俺はソニー・ミュージックの副社長で、大賀さんとサシで会えるところにいるから、俺を引きずり込めばショートカットで上に持って行ける。何かあれば俺が土曜日でも日曜日でも大賀さんを追っかけ回して、「なんとかしてくれ」と話を持ち込むからね。久夛良木は俺をうまく使ったのよ(笑)。それと、ソニー社内で大賀さんとの間にいる層の説得には徳中さんや伊庭さんを使ったりして、迂回路や変化球をうまく織り交ぜながら進めたのね。
任天堂とは違うことをする
丸山:でも結局、プレイステーションがなぜうまくいったかというと、基本的には任天堂が使っていた製造ラインとか販売チャネルなどのインフラをなるべく使わないようにしたから。任天堂の後を追いかけるだけだと、いつまでたっても追い抜いて前に行けないじゃない。それで、まったく別のことをしたら、めちゃめちゃうまくいった。任天堂は俺らが自分たちの販売チャネルに乗ってくると予想していたのに、全然、違うことを始めたから手の打ちようがない。
三宅:任天堂の販売チャネルはどういうところだったのですか。
丸山:任天堂は昔からのオモチャの販売ルートを使ったけど、俺たちはそれをほとんど使わなくて、遊び終わったゲームソフトを買い取る中古屋に置いたの。
三宅:最初からそこからですか。家電量販店などではなく。
丸山:そう。たとえば、任天堂がマリオを大量に作ったけど、右肩上がりの人気から発売当日に売り切れてしまう。昔のゲームのカセットというのは、CDと違って、カセットそのものがハードみたいなものだから、あれを増産しようと思うと2カ月くらいかかる。そうするとゲーム好きは中古屋に来て、中古のマリオを買う。それなら中古屋に新品のプレイステーションとCD-ROMをどんどん供給するようにすればいい。
三宅:そうか。みんな中古屋に行ってました。自分にも身に覚えが(笑)。
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