KADOKAWA ニコ動の次はツイッター 電子書籍の立ち読みで、紙メディアを底上げ

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電子書籍への展開を加速している出版業界でも、今回のツイッター立ち読み技術への関心は高い。会見の数日前からKADOKAWA側は、電子書籍の普及やインフラ整備を目的とする出版デジタル機構(産業革新機構、出版大手、印刷大手各社等が出資)などに今回の発表内容を伝えていたというが、すでに2万点を超える作品の掲載依頼が殺到しているという。

KADOKAWAでは、「当社だけでなく、日本中の出版社の共同のプラットフォームとして使っていただくために、“ePub埋め込みボタン”の他社サイトへの供給を、7月中にも実現したい」(角川アスキー総合研究所の福田正専務)としている。

同業他社への提供に当たって、有料か無料かなどは現時点で未定ながら、サーバーやトラフィック量によるコストがそれなりに発生するため、「できるだけ安価に、ユーザーが普通に使える形」(同)で、何らかの料金が設定される公算だ。

紙メディア、リアル書店の底上げにつながる?

KADOKAWAは5月中旬に、「ニコニコ動画」で知られるネット動画配信大手、ドワンゴとの経営統合を発表したばかり。その記憶も新しい中でのツイッター向け技術の開発発表だけに、ネット・デジタル事業へのさらなる傾斜が想起されるのは当然だろう。

同社の前2014年3月期の事業別売上高をみても、従来型ビジネスの「書籍」が前期比6.1%減の656億円、「雑誌/広告」が0.7%減の325億円、「映像」が22.6%減の263億円と軒並み低調の中、「ネット・デジタル」は29.7%増の216億円と大幅に伸びた。事業別営業利益は非公表だが、書籍が大半を稼ぎ、ネット・デジタルは投資負担が先行しているもようだ。今後は、前期実績(13年9月期)で売上高359億円、営業利益21億円をたたき出したドワンゴを連結化することから、ネット・デジタルが書籍に次ぐ収益柱に躍り出ることになりそう。

ただ、今回のツイッター向けePub技術は、電子書籍のデータを活用したとはいえ、電子書籍の拡販だけを目指したものではない。たとえば、KADOKAWAの得意とするコミックは、リアル書店では立ち読み防止のため透明フィルムでパッケージされていて試読もできない例がほとんど。これが電子書籍で手軽に立ち読みできるようになれば、そこから書籍通販サイト経由でリアルの本の販売につなげたり、さらにはリアル書店に送客することも可能になるかもしれない。

出版業界の中でネット事業に最も先行してきたといえるKADOKAWAは、紙メディアの凋落にも歯止めをかけることができるのか。ツイッター活用がその解決法の一つになる可能性はある。

大滝 俊一 東洋経済 記者

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おおたき しゅんいち / Shunichi Otaki

ここ数年はレジャー、スポーツ、紙パルプ、食品、新興市場銘柄などを担当。長野県長野高校、慶応大学法学部卒業。1987年東洋経済新報社入社。リーマンショック時に『株価四季報』編集長、東日本大震災時に『週刊東洋経済』編集長を務め、新「東洋経済オンライン」発足時は企業記事の編集・配信に従事。2017年4月に総務局へ異動し、四半世紀ぶりに記者・編集者としての仕事から解放された

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