「鬼滅の刃」大ヒット支えた日本人の新しい信仰 「好きなことして生きていく」の次に来る価値観

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それが明確には存在しない、というのが、現在の日本が抱える不安でもあり、同時に希望でもあると私は考えます。扇動的なリーダー、陰謀論、フェイクニュースに多くの国民が流される、といったようなことは、日本では起きていません。そして、伝統的な価値観にとって変わる新しい考え方も、いくつか萌芽しています。

「自分の好きなことを追求する」「好きなことをして生きていく」というのは、そんな新しい価値観の1つです。この価値観の主導者は1人ではありません。自己啓発書やソーシャルメディア、オンラインサロンなどで同時多発的に説かれ、多くの人の支持を集めて、1つの時代の潮流になっています。

そして、そんな価値観に触発され、実際にそれを実践した何人かは、新しいヒーロー、時代の寵児になっています。この新しい価値観が、まさに日本にとっての希望だと考えるゆえんです。

「自分の好きなことを追求する」という価値観は、100万人に1人の天才を世に生み出すためのものだと私は考えます。そうして生み出された天才は、社会に大きな価値をもたらし、時に世の中を変革します。その意味で、生み出された天才にとってはもちろん、その恩恵を享受する社会にとっても価値あるものです。

しかし、それは同時に、残りの99万9999人を置き去りにしてしまうという危険性も孕んでいます。

また、多様性の大切さが叫ばれる昨今です。たった1つの価値観で、社会全体を覆い尽くせるような時代ではありません。昭和の伝統的な価値観とも、平成の革新的な価値観ともまた違う、令和のまったく新しい価値観。そんな第三極が今、求められているのです。

「人の役に立ちたい」という令和の新しい価値観

ボランティアでやっているキャリア相談などで若い人たちと話をしていると、「人の役に立ちたい」という気持ちを持っている人が多いことに驚きます。くだんのオンラインサロンに参加している人たちの中には、自分自身がサロン主のような突き抜けた存在になりたい、という人もいますが、サロン主を応援したい、コミュニティーに貢献したい、という心持ちの人がそれ以上に多いと聞きます。

ここに見られるのは、「自分がやりたいこと」を追求する価値観とは対照的な、「人が自分にやってほしいと思うこと」を追求する価値観です。

「たまたま近くにいたから」と利用されるのでも、「他に誰も頼れないから」と依存されるのでもなく、「他でもないあなたに」と頼られること。そして、それゆえに重視され、感謝され、その結果として報酬にも恵まれること。これこそが仕事における、なかんずく人生における幸せだと考える価値観です。

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