スッキリ「アイヌ差別発言」流した現場の実情  放送前の事前チェックが緩かったのはなぜか

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一方で、「週末ジョイHulu」などの番組終盤の〝ミニ企画〟は、見ている視聴者の総数も減る時間帯である。ここでの視聴率が多少増減しても、番組全体への影響は小さいのだ。

それゆえに、ミニコーナーは軌道に乗るとチェックが「おろそか」になりがちなのだ。

ましてや「Hulu」で観られる作品を紹介するだけのコーナーである。

関係者の気持ちを想像すれば、

「毎週楽しくお届けできれば、まあ良いのではないか。なので、現場に任せておきましょう」といったところか。

そして、そこに「チェックの隙間」が生じてしまったのだ。

実際に私も「スッキリ」の総合演出だった時期に、占いコーナーがいつ、どのように作られているかなど、意識することはほとんどなかった。

コーナーの担当者が、ニュースやエンタメ情報などを作る「本隊」とは別のところで作業をして、完成した「占いVTR」を持ってくるのだ。

もちろん担当のプロデューサーは中身をチェックしていたのだが。

だが私の体験から言えば、番組終盤のミニ企画は、やはり「チェックの優先順位」は〝下位〟となってしまう。

「変異ウイルスの危険性」や「ワクチンの副反応確率」などニュースのチェックに追われる中で、こうした企画への注意が疎かになってしまった。

日本テレビの関係者から漏れ伝わる話でも、大方このような感じでチェックが緩かったようである。

今回の問題はそのような「チェックの隙間」に起きてしまった。

ミニコーナーもニュースと同様に放送される

たとえ番組の中核ではないコーナーでも、放送に乗るということでは「冒頭のコロナ関連ニュース」と変わりはない。

加藤浩次さんは、吉本興業との関係でデリケートな時期である。

水卜麻美アナは、間もなく「スッキリ」を卒業して「ZIP」へと移っていく。

この2人にこのタイミングで謝罪させてしまったのは重いことだ。そして「チェックの隙間」二度と生じないように、日本テレビにはぜひ万全の体制を作ってもらいたいと、番組OBとして願っている。

村上 和彦 TVプロデューサー、京都芸術大学客員教授

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むらかみ かずひこ / Kazuhiko Murakami

1965年生まれ、神奈川県出身。日本テレビ放送網に入社し、スポーツ局に所属。ジャイアンツ担当、野球中継、箱根駅伝などを担当する。その後制作局に移り、「スッキリ」「ヒルナンデス」「ブラックバラエティ」「24時間テレビ」など幅広いジャンルで実績を上げる。2014年、日本テレビを退社し、TVプロデュースの他、執筆、講演会など活動の場を広げている。現担当 : BSフジ「プライムオンラインTODAY」監修演出など。

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