――とはいえ従業員の中には事前説明ができなかったのでしょうか。「急すぎる」という声もありました。
3月半ばのグループ本体の中で、会議をし、緊急性があり、一刻を争うという結論に至りました。会社都合でいえばもう余力がない。乗務員目線でいうなら、今ならまだ失業保険を高い水準でもらえて、生活の足しになるはずだ、と。
ほかの職種に比べ、他社へ転職しやすいのがこの仕事で、ほぼ100%再就職できる。合理的に考えるなら同意してくれるはずだ、という私の考えも根底にありました。ウチで続けても低い休業手当で飼い殺しのような状態になることは目に見えていたので。
ところが皆さんに説明する前に先に報道が出てしまい、後付けの形になってしまった。そこに会社の前で出待ちしていたテレビ東京の取材クルーが説明についてきて、という流れです。私の判断や準備不足が招いた結果でもあり、真摯に受け止めています。
その後、解雇に合意いただけなかった乗務員さんとは話し合いを何カ月も重ね、最終的には95%以上の方が同意していただきました。
直前のタクシー会社買収は形式だけのもの
――解雇報道の直前に、兵庫県のファイブスタータクシーを買収していたことが批判に拍車をかけました。買収の経緯について聞かせてください。
2019年の12月に、知人を介して「兵庫のタクシー会社が売却を考えており、相談したい」という話がありました。当時はグループの数字も落ちていないイケイケの段階で、買収の方向で話がまとまった。
ところがコロナがおこり、直接ウチから資金は出せなくなった。それでも現地に出資者が見つかり、タクシー業界と関係ない方だったので、形式上、当社に受け継ぎだけ行われたということが正しい経緯です。
誤解がないようにいえば、私は代表ではありますが、ウチのようなベンチャー企業は複数の投資家の資金により成り立っています。つまり、投資家の合意が得られないと、代表といえど、単独で買収などの決定はできないということです。
現在もファイブスタータクシーの経営は現地の方に任せたまま、私自身はほぼ関わっていない状況です。
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