「失業給付勧め、600人解雇」のタクシー会社の今 ロイヤルリムジン社長独占インタビュー

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――具体的にはどういった部分で齟齬が生まれたのですか。

話し合いを重ねていくと、給料や待遇だけではない、人間的な温度やつながりを重視している方がいることがわかってきたんです。目から鱗というか、ハッとして。あ、こういう方もいらっしゃるんだと、根本的な発想が間違っていたことに気づいたんです。

今でも7割の乗務員の方が経済合理性を求めていると思っていますが、大切なことはそうでない3割の方もいらっしゃるということです。世間からすれば当たり前のことかもしれませんが、私にはまったくそういう視点や発想がなかった。本当に皆無だったんです。

これまでは組合の存在意義などを深く考えることもなかったですが、3割の方のために組合があるとも感じた。その反面、戻ってきてくれた多くの割合を占めるのが彼らですし、そういう方が実はいちばん会社を愛してくれていたんだな、と。

600人解雇の一連の流れの中で、最も学びとなったのは人の心の機微の部分ですね。数字だけでなく、個々の考え方を尊重するという、経営の重みを知ったことで事業に対する考え方も変わってきました。

非常の備えという概念が乏しかったのは私の甘さ

――現状のタクシー業界では国の規制によって新規参入が難しく、拡大するためには買収という選択肢しかありません。

ウチも最初は10台で新規参入しました。その後台数を増やせないという特別措置法が通ってしまって、国を相手に裁判をしましたが、敗訴となった。「一部の既得権益を守ることを重視して、自由競争でないのか」と、どうしても納得できなかったんです。そこで火がついた面もありました。

成長していくことを唯一の源泉としていた部分があり、集まってくれるのもそういう野心を持った方々でした。ただ、ここまでのパンデミックに対して予測や準備はしていませんでしたし、非常時の備えという概念に乏しかった。そこは私の甘さであり、ウチの弱さだったとも思います。

――このタイミングで、新しい事業所を開業した意図を教えてください。

1月中旬に乗務員全員解雇のうえ廃業した会社があり、そこの社員さんから「何とかなりませんかね」と相談があったんです。自分でいうのもなんですが、私は異常にメンタルが強いのかもしれません。だから騒動時の批判も受け止められたし、これ以上失うものもないわけで。

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