3兆円を運用する会社社長の「お金と夢」の哲学 フットサル元台湾代表と金融マンの顔を持つ男

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香港レンジャーズ選手時代(右)(写真:時国氏提供)

「身体は半年あれば元の状態に戻せる」と一念発起し、毎日10㎞のランニングをこなした。食事制限も課して体重を15キロ減らしセレクションに臨んだ結果、フットサルリーグに所属するFCエンフィールドというチームからのオファー獲得に成功した。

イギリスでスタートしたフットサル選手と外資系金融マンという二足のわらじの生活は、異動した香港でも続いた。フットサルリーグの香港レンジャーズに入団。同チームでも主将を務めた。

2016年、FIFAフットサルワールドカップアジア最終予選に、台湾代表として出場した(左)(写真:時国氏提供)

そのとき、台湾から再び声がかかる。2015年にFIFAフットサルワールドカップアジア予選に出場する代表チームのメンバーに選出。モンゴルで行われた1次予選やウズベキスタンで開催された最終予選に出場した。

「本源的価値」を見極め、長いスパンで目標を定める

W杯予選出場後の2016年10月には日本へ帰国し、社長に就任。国内のフットサルリーグでも1年間プレーしたが仕事が忙しくなり、今では社長業に専念する毎日を送る。 グループ全体の運用資産は320億ドル(2020年6月末時点)。日本円では3兆円を超える規模だ。営業は一切しないにもかかわらず、着実に資産を増やしてきた。

2021年3月17日13時00分追記】初出時、運用資産に関する表記に誤りがありましたので上記のように修正しました。

「見た目のいいモノを売って、悪いモノを買うのが逆張り運用」。本源的価値、つまりフェアバリューを下回る銘柄に投資し、下落すれば買い増しすることもある。

日本株の組み入れ銘柄の上位には著名投資家、ウォーレン・バフェット氏の保有で話題になった三菱商事、三井物産などの大手商社が名を連ねる。これらは、2013年から保有しているという。「有形純資産が増加しているうえ、配当利回りの面からも魅力的」。

大手商社株以外にも長期保有している銘柄は多いが、「“長期投資”とは本源的価値を上回るまで何年でも焦らずに待つことのできる耐性がある、ということ」。

異色のキャリアを持つ経営者は、「クールヘッド、ウォームハート」を武器とする(写真:時国氏提供)

長いスパンで目標を定め、達成に向けて最善を尽くす。まさに自らの“本源的価値”を冷静に見極め、綿密な計画を立てて実行に移してきた、時国の生き方そのものではないか。英国でオービスと出会い運用哲学に魅せられたのも、むべなるかな。  

サッカー人生で最も思い出に残る試合が、台湾U-19代表として出場した2000年のFIFAワールドユース選手権アジア予選の開幕戦となった対インドネシア戦。会場の中国・四川省のスタジアムには2万人の観客が詰めかけ、「(小学1年生のときから)12年間ずっと夢見てきた舞台が想像以上にすばらしかったことに感動し、心からの感謝の念が沸き起こってきた」。

情熱と冷静さ、「稼げる人」は2つを併せ持つ。(敬称略)

松崎 泰弘 大正大学 教授

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まつざき やすひろ / Yasuhiro Matsuzaki

フリージャーナリスト。1962年、東京生まれ。日本短波放送(現ラジオNIKKEI)、北海道放送(HBC)を経て2000年、東洋経済新報社へ入社。東洋経済では編集局で金融マーケット、欧州経済(特にフランス)などの取材経験が長く、2013年10月からデジタルメディア局に異動し「会社四季報オンライン」担当。著書に『お金持ち入門』(共著、実業之日本社)。趣味はスポーツ。ラグビーには中学時代から20年にわたって没頭し、大学では体育会ラグビー部に在籍していた。2018年3月に退職し、同年4月より大正大学表現学部教授。

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