3兆円を運用する会社社長の「お金と夢」の哲学 フットサル元台湾代表と金融マンの顔を持つ男

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日本円で3兆円超を運用する「オービス・インベストメンツ」の日本法人社長、時国司氏。その人生観と投資哲学に迫ります(写真:時国氏提供)
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半世紀近く前に創業し、コントラリアン(逆張り投資家)として知られるイギリス領バミューダの資産運用会社「オービス・インベストメンツ」の日本法人社長、時国司(ときくに・つかさ)39歳。彼には、「フットサル元台湾代表」というもうひとつの顔がある。  

【2021年3月17日13時00分追記】初出時、資産運用会社に関する表記に誤りがありましたので上記のように修正しました。

台湾で台湾人の父と日本人の母の間に生まれた時国は、日本の小学校で1年生からサッカーを始め、輝かしい選手人生を歩んだ。一方でスポーツと学業を両立させ、大学卒業後は金融業界でさまざまなキャリアを積んできた。これまでの人生を振り返ると、彼の身の処し方にはトップを務める運用会社の投資哲学が重なって見える。

父や祖父からの教え「衣食足りて礼節を知る」  

華々しいデビュー戦だった。漫画の『キャプテン翼』に憧れていた時国は通学していた小学校でチームの紅白戦を観戦。スパイクを履くことも知らず、運動靴に、「ポパイ」が描かれたTシャツといういでたちだった。それでも、試合の途中から出場させてもらったところ、なんとハットトリックの大活躍。以来、彼のポジションはつねにFWとなった。  

2015年、FIFAフットサルワールドカップアジア予選に出場する台湾代表チームのメンバーに選出された(写真:時国氏提供)

小学1年生から3年生まで続けたが、練習は2週間に1回のみ。コーチが選手に掛ける言葉は「もっと広がれ」「固まるな」の2つしかなく、大会に出れば0対10で1回戦敗退だった。それでも、「小学1年生のときから台湾代表になることを目標に掲げていた」(時国)。

3年間の中断をはさんで、中学入学後にサッカーを再開。受験し合格した慶応義塾湘南藤沢中等部は決してスポーツに熱心だったわけではなかった。「私が入学した時点でようやく、グラウンドの造成に着手した程度の力の入れようだった」。  

あえて大学までの一貫校を志願したのにはわけがある。「中高の6年間は英語・ITを学びながらサッカーも両立させたいと考えた。一貫校ならば大学受験に時間を費やす必要がないため、それも可能」。大学ではサッカーでなく、ビジネスにつながる勉強に専念するというシナリオを思い描いていた。  

そこまで用意周到だったのは、父や祖父からの厳しい教えがあったからだ。幼いころから「衣食足りて礼節を知る」という故事成語をさんざん聞かされて育ったため、「メシを食うことを簡単には考えていなかった」。

スポーツに打ち込んでもメシのタネにはならず、「サッカー台湾代表になりたい」などと口にすれば、「夢みたいなことを言うな」と家族から一蹴された。だから、周囲を説得するには勉学と両立させるしかない。サッカーにのめり込んだ時国にとって、「文武両道」を貫くのは宿命だったともいえる。

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