惜しい!「伝え方が残念」で人生損する人の盲点 せっかくの「中身」を活かす人、潰す人の微差
「突然で恐縮ですが、祖母の話をさせてください」で始まる自己紹介は、実は実際に私が面接で使ったものです。
私は就職・転職における面接試験が比較的得意で、その通過率に驚いた転職エージェントに「秘訣」を聞かれたことがあります。答えは「どう伝えるか」をしっかり準備する、です。1週間の準備期間があったら、「何を伝えるか」の整理のみならず、少なくともその半分を「どう伝えるか」の準備に使います。
しかし、残念ながら、これは私の発明でも何でもありません。広告・マーケティングの世界では当たり前のことなのです。
洋の東西を問わず、広告代理店には大きく3つの職種があります。AE(アカウント・エグゼクティブ=営業)、ストプラ(ストラテジープランナー)、クリエイティブです。ストプラはデータやマーケティング理論を駆使して「何を伝えるか」を考えます。クリエイティブはそれを「どう伝えるか」に文字通り心血を注ぎます。ストプラとクリエイティブをキャスティングし、その全体をプロデュースするのがAE=営業です。
広告制作の現場では、「What to say」と「How to say」という言葉が頻繁に飛び交います。「What to say」が「何を伝えるか」、「How to say」が「どう伝えるか」です。広告制作においては、この2つの議論を区別し、特に「どう伝えるか」、つまりクリエイティブのパートにより多くの時間とお金と情熱を注ぎ込みます。なぜなら、広告コミュニケーションにおいては、この「どう伝えるか」が何より大きくものを言うからです。
コミュニケーションの「ギャップ」を最小化する工夫
先ほども少し触れましたが、人と人とのコミュニケーションには「ギャップ」がつきものです。例えば、あなたは「大都会」と聞いて何を思い浮かべるでしょうか?
「クリスタルキング」「ニューヨーク」「シンガポール」「東京」「新宿」「岡山」――これらはすべて、研修でこの話をしたときに、生徒から実際に返ってきた答えです。まったく同じ言葉でも、受け手によってここまで受け取るイメージに差が出るものなのです。
いかなるコミュニケーションにおいても、発信側と受け手側にはこのようにイメージのギャップが発生します。そのことを意識し、受け手の頭の中でそのメッセージがどう処理されるかを考えないと、伝えたいことはうまく伝わりません。改めて強調すると、「何を伝えるか」が上手に整理されていたとしても、それだけではその内容が正しく伝わらない可能性が大いにあるのです。
広告などの「マスコミュニケーション」においては、発信側と受け手側が直接相対しないのと、前提情報を知っている・知らないの差が大きいので、このギャップは肥大化しがちです。そこで、「どう伝えるか」をとことん突き詰める「クリエイティブ」という職能が発展してきたというわけです。
また、ビジネスにおいては、そもそも自分の話に熱心に耳を傾けるモチベーションが受け手側にない場合も多いでしょう。広告はその典型です。
そういった場合には、まず相手の「心のドア」を開けてもらわなくてはなりません。それには笑ってもらったり、驚いてもらったり、共感してもらったり、感動してもらったりして、つまりは相手の「心を動かす」必要があります。ここでも「どう伝えるか」の工夫がものを言います。
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