29歳棋士「えりりん」全てを将棋に捧ぐ情熱人生 「常に勝ちたい」そして「将棋を普及したい」

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20代ながらプロ棋士としてすでに13年のキャリアがある山口恵梨子さん。女流棋士の日々とは、いったいどんなものなのだろうか
これまでにないジャンルに根を張って、長年自営で生活している人や組織を経営している人がいる。「会社員ではない」彼ら彼女らはどのように生計を立てているのか。自分で敷いたレールの上にあるマネタイズ方法が知りたい。特殊分野で自営を続けるライター・村田らむが神髄を紡ぐ連載の第91回。

16歳でプロ入り、すでに13年のキャリア

山口恵梨子さん(29歳)は、日本将棋連盟に所属する女流棋士だ。

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まだ20代ではあるが、山口さんがプロ入りしたのは16歳だからすでに13年のキャリアがある。

女流棋士という仕事は、一般的な職業とかけ離れているため、少しイメージがつかみにくいところがある。

山口さんが昨年上梓された『山口恵梨子(えりりん)の女流棋士の日々』(竹書房)ではそんな女流棋士の仕事の変わった部分や、プライベートの過ごし方を漫画で楽しく紹介している。

山口さんはどのように女流棋士になったのか、そして女流棋士としてどのような目標を持って日々戦っているのか。

『山口恵梨子(えりりん)の女流棋士の日々』(竹書房)では、漫画で女流棋士の仕事や、プライベートの過ごし方を紹介している

山口さんは物心がついたときから東京で暮らしていた。山口さんのお父さんはアマチュア四段の将棋指しであり、娘を女流棋士にしたいという夢があった。

「6歳のとき、父に将棋を教わりました。すぐにルールを覚えて1週間後には将棋イベントに連れて行ってもらいました」

イベントではプロ棋士の先崎学さんが1人で10人を相手に対戦していた。

「世の中にはすごい人がいるんだなあ、と驚きました。最も手合差のある先生は王と歩しかない、10枚落ち(10枚の駒を使わない)で、指導対局していただきました」

山口さんは6歳のときに早くもプロ棋士を目指しはじめたという。

小さい頃に将来の夢を持つことはあるが、普通の子どもの夢よりもっとずっとリアルな夢だった。

「2歳上のいとこがいたんですが、ものすごく勉強を頑張っていたんですね。

私の母も教育熱心だったので勉強はしていたのですが、いとこには絶対に勝てないと思いました。なら私は勉強とは違う道に進もうと思いました。いわば6歳で勉強に見切りをつけたんですね(笑)。それ以降は『女流棋士になりたい』と思って生活していました」

びっくりするほど、早い時期に見切りをつけたと思える。

「プロ棋士を目指すなら小学校で育成機関に入っていないと、まず無理です。将棋界は、早いうちに将来の職業を決めてしまう世界です。だから10代後半~20代になって悩む人が少なくありません。成長したうえで、自分の本当にやりたいことは何かを、改めて考えるのは大事ですね」

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