中学受験では「将棋をやってもいいか」と学校側に聞いてから受験をした。学校によっては、
「芸能活動とみなすのでやめてください」
と言われることもあった。
「私立の中高一貫の女子校に進学しました。『いじめの対象になるかもしれないから、将棋のことは話さないように』と言われていました。先生はこっそり応援してくれるという感じでした」
中学から高校1年生までは、将棋道場に通ったのだが、親の計らいで同世代の男子がいる道場には連れて行ってもらえなかった。
「おかげで60~70代のおじいちゃんがいる道場にしか通っていません。父は若い男女で間違いがあってはいけないと思ったのかもしれませんが、将棋が強くなるには絶対に同世代の人がいたほうがいいんですよ!!
ただおじいさんの語る戦時中の話などは非常にためになりました。でも皆さん最初は『かわいい』と言ってくださるんですが、私がボロ勝ちしたら『かわいくない』って言うんですよね(笑)。
そんな経験もあって、親を信じすぎちゃいけないな、と悟りました。親の考えと、自分の考えは切り離して、親の意見は参考程度に聞くのがいいですね。うまくいかなかったことを親のせいにしてもしかたがないですし。ある意味、中学時代で親離れできたのはよかったと思います」
16歳で年に2人しかなれない狭き門をくぐる
そして、山口さんは2008年、16歳のときに女流棋士(プロ)になった。
当時は女流育成会で1位になった1人だけが女流棋士になれるシステムだった。年に2人しかプロになれない狭き門だ。
山口さんが、入会したのは2003年だったから、5年をかけてプロになることができた。
「すごいうれしかったですね。私がやりたいことは『将棋の普及活動』なんです。将棋の素晴らしさをみなさんに知ってもらいたいと思ってました。女流棋士になったらそれができるってとてもうれしかったです」
だが、そう簡単にはいかなかった。
女流棋士になってから、なかなか対局に勝てなかったのだ。
「女流棋士をなめてました。皆さん、本当にめちゃくちゃ強かったです。棋譜を見てるだけではわからないこともたくさんありました。実際に指してみて、はじめて相手の本当の強さがわかりました」
将棋を強くなるのに最も大事なのは知識を増やすことだという。知識量が少なければ、まず勝てない。
アマチュアの大会では誰と対戦するか決まっていない。すべてに対応できるように知識を増やしておかなければならない。
しかしプロの対局では、対戦相手があらかじめ決まっている。相手を徹底的に分析してから対局をする。
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