50代に糖尿病で亡くなった男が残す痛切な筆録 「落下星の部屋」が20年以上も続いている理由

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そのまま病院に直行し、2週間の入院で血行の回復を模索したが断念。ひざ下からの切断手術を受け、そのまま義足作りとリハビリのプロセスに移った。翌月には身体障害者手帳の交付を受ける。1995年。40代半ばの出来事だった。

「右足切断」ページ(筆者撮影)

翌年には腎臓障害が悪化して腎不全となる。数日ほど胸焼けすると感じていたら夜中に突然吐き気が襲い、息がほとんどできなくなって救急車を呼んだ。そこから週に3度の人工透析が始まる。動脈から血液を採りだし、ろ過装置(ダイアライザー)を通して静脈に戻す。前準備や透析後の止血の時間を含めると1回当たりおよそ5時間。透析外来を怠ると待っているのは死だ。

その数年後には、うおのめが元で壊疽が始まり、左足も切断する手術を受ける。

やっと入院したと思ったら、さっそく左足を膝下から切断することになりました。
これで両足が義足となりなす。
なんか、生きたままユウレイになる気持ちです。
(だってユーレイには足が無い。あははは。)
(落下星の部屋 「左足切断」より)

身体障害者手帳の障害名欄には、「疾病による両下肢機能の著しい障害(両下肢欠損含む)(2級)」と「糖尿病による自己の身辺の日常生活活動が極度に制限されるじん臓機能障害(1級)」の文字が並んだ。

失明や両足切断は行動の制約を生み、週3回の透析外来は働く時間の制約に直結する。長年勤めていたプラネタリウムからも身を引くしかなくなり、職場を依願退職した。以来、職にはついていない。重度の障害により受け取れるようになった生命保険の保険金が生活をつなぐ命綱となった。

「私を『おろかなやつ』と笑って結構です。」

「落下星の部屋」を立ち上げたのは退職から1年近く経った頃だ。

当初からコンテンツは糖尿病関連の記事が中心で、天文関連は日記でたまに言及する程度にとどまる。相互リンクも同病を患う人が中心だ。天文への関心が尽きたわけではないし、過去と隔絶したいわけでもない。けれど、積極的に取り上げるつもりはなかったようだ。

サイトのコンセプトは「人工透析」の締めの文章から読み取れる。

現代の医学では糖尿病はなおせません。進行を遅らせるだけでせいいっぱいなのです。
厳しい言い方ですが、それが現実なのです。
これ以上悪くしないために、日々努力を重ねる覚悟でいないと……
私を「おろかなやつ」と笑って結構です。でも、あなた自身は絶対に同じ道をたどらないと約束してください。本当にお願いいたします。
(落下星の部屋 「人工透析」より)
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