年商100倍の急成長 シャープを抜いた! 中国の太陽電池大手・サンテックの驚異
2月下旬に東京ビッグサイトで開かれた国際太陽電池展。広大な会場で最も大きなブースを誇り、客足を止めたのは、中国の太陽電池メーカー、サンテック・パワー(尚徳電力)。日本の“お家芸”ともいわれた太陽電池における、新興勢力の台頭ぶりが一目瞭然だった。
江蘇省無錫に本社を置くサンテックは2001年9月設立と歴史は浅いが、その成長は驚異的だ。赤字企業だったのは設立翌年まで。その後は倍々ゲーム以上の成長を続け、07年12月期は売上高が約13・4億ドル、営業利益が1・7億ドル。過去5年間で、売上高は100倍、営業利益は220倍に急膨張した計算だ。業界順位は07年、ついにシャープを追い越し、世界2位につけている(1位はドイツのQセルズ)。
同展の基調講演では英国人のグラハム・アーテス最高執行責任者(COO)が、同社の研究開発体制や08年上期にも開始を見込んでいる日本市場での販売計画などを満面の笑みで語った。
直前の講演では、シャープの濱野稔重・ソーラーシステム事業本部長が「07年はシリコン不足で、シャープにとって非常に厳しい1年だった」と重々しい表情で語ったのとは好対照だ。年間生産量そのものはシャープがわずかに2メガワットサンテックを下回っただけだが、業界の巨人を抜いた事実がサンテックの経営陣に圧倒的な自信を与えた。
未曾有のシリコン不足 10年の長期調達で克服
07年の太陽電池市場でシリコン不足に悩まされ、つまずいたのはシャープだけではない。台湾・シンガポールなど新規参入の電池メーカーが増えて業界内で取り合いになったうえ、同様にシリコンを原料に使うメモリ半導体も大幅増産だった。その需要拡大と裏腹に、供給側のシリコンメーカーは巨額投資の伴う増産に慎重な姿勢をとったため、極端なシリコン不足が起こっていたのだ。
この環境の中、業界トップ3から転落した京セラは、「原料がないという苦しみに耐える時期だった。いかにシリコン量を低減し生産するかの品質改善に努めていた」(ソーラーエネルギー事業本部)と歯がみする。
業界全体を覆ったこのシリコン不足を、サンテックはどのように乗り切ったのか。実は、シリコン不足の兆しが見え始めた06年の時点で、複数のシリコンメーカーと10年間もの長期買い入れ契約を結んでいたのだ。サンテック側は契約金額・数量を明らかにしないが、業界関係者の推計では数百億円を超える巨額契約であったとされる。
「わが社は研究開発から生産・販売まで、太陽電池のみに事業を集約した“ピュアプレーヤー”。だからこそ産業の潮目を正確に読み、迅速に経営判断を下すことができる」
施正栄(シ・ジェンロン)最高経営責任者(CEO)はそう語る。
サンテックが迅速かつ大胆に巨額投資に踏み切れる理由はもう一つある。05年に米ニューヨーク上場を果たし、4・5億ドルという巨額の資金を調達したからだ。株式市場の活況もさることながら、「中国」「環境」「ハイテク」という話題性の高い銘柄だったことが大きい。
この結果、上位株主でもある施CEOは翌06年、米『フォーブス』誌の富豪ランキングで中国人としては最高位の世界40位に名を連ね、一躍中国起業家の羨望の的となった。