日本人に知ってほしい芸術家が育つ土壌の価値 作品の芸術性と価格にどんな相関関係があるか

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アートゲームの新たなプレイヤーたちの興味の持続力や資力がどれくらいあるのかによって、このブームが一過性で終わるのかが決まるでしょう。注意深く見守っていきたいと思っています。

現状では、3000億円もない小さな日本のアート市場で作家を育てることすら難しい。多くの作家たちは、学校の先生やアルバイトをしながら作家活動をしており、専業のフルタイムアーティストは、200人いるかいないか。

日本人が日本人の作家を買わない

なぜそうなるかといったら、日本人が日本人の作家を買わないからです。江戸時代には、将軍や豪農、豪商。明治時代には財閥。戦後には銀行や証券会社も含めた企業が作家を買い支えていました。

ただ、バブルが崩壊すると、国内にしかマーケットがない日本画や洋画の価格が、5割、9割と大幅に下落した。かつて、10億円ほどした横山大観の絵など、今や数百万円で買える時代です。そして、ずっと下がったままです。

なぜ今買い支える人がいないのか。それは、日本のお金持ちが精神的に貧困だからなんです。本当のお金持ちがいない。今、アート市場に投機的なマネーを投じている人たちは、株や不動産の値上がりと同じような感覚で買っているようです。結果、国際的にはまだ勝負にならないような作家たちが値上がりしてしまっている。作家にとって、若いうちに価格が上がりすぎてしまうことは必ずしもいいことではない。その後のキャリアで、値段が下降しつづけることもありうるからです。

そうではなく、長期的な視座で日本人の作家を育てていかなくてはいけない。これは、国の今後をも左右する問題です。というのも、現代アートは国際的なコミュニケーションに有効なツールだから。例えば、日本にある外国の大使館を見ると、その国の作家の現代アートが飾られている。日本の在外大使館の場合はどうでしょうか。

自動車産業ですら、思いもかけない異業種企業が参入して車を作れる時代に突入している。日本がモノを作って活躍する時代がもしも終わってしまったら、文化や観光を頼っていくしかない。そこできちんと作家が育っていないと、この国の未来は暗いでしょう。

『週刊東洋経済』2月20日号(2月15日発売)の特集は「アートとお金」です。
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印南 志帆 東洋経済 記者

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いんなみ しほ / Shiho Innami

早稲田大学大学院卒業後、東洋経済新報社に入社。流通・小売業界、総合電機業界などの担当記者、「東洋経済オンライン」編集部などを経て、現在は『週刊東洋経済』の巻頭特集を担当。過去に手がけた特集に「半導体 止まらぬ熱狂」「女性を伸ばす会社 潰す会社」「製薬 サバイバル」などがある。私生活では平安時代の歴史が好き。1児の親。

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