日本人に知ってほしい芸術家が育つ土壌の価値 作品の芸術性と価格にどんな相関関係があるか
もちろん、セカンダリーの価格が高くなれば、その分プライマリーの価格にも影響してきます。ただこの関係は両刃の剣で、もしセカンダリー価格が下がったり、オークションで売れなかったり(不落札)した場合は、プライマリーで少しずつ築き上げてきた価格が破壊されることもあります。
――値段が急騰したら、バブルが弾けて急落することもあるのではないでしょうか。
「山高ければ谷深し」とは株式世界の格言ですが、アートマーケットに相場があるとすれば、上がり下がりは市場の原理ですね。オークションでの価格の急騰が、その作家の芸術性や希少価値を評価したものなら、急落してもいずれ値は戻ります。問題は一過性のブームに乗った作品です。やけどするかもしれません。
美術史上の評価が固まっている作家の場合は、景気が悪くなってもあまり値崩れしません。例えば、アメリカを代表するポップアーティスト、アンディ・ウォーホルの場合、一時的に下がることはあっても、「ポップアートというジャンルを築いた」という評価があるから価格が元に戻ったり、さらに上がっていったりする可能性があることが保証されている。今でも、価格はどんどん上がっています。
超富裕層の中には作品を買い占める例も
――資産性度外視でパトロンとして買い支えていた作家が、結果的に値上がりしていて資産として膨れ上がっていた、ということもありえそうです。
超富裕層の中には、「この作家、いいな」と思ったら、その人の作品を買い占める人もいます。マネーゲームに参加せずに、売らずに長い間持ち続けて鑑賞することを楽しむ。結果的に、その作家の才能が花開いて世界的に評価をされ、どんどん作品の値段が上がり、ものすごい含み資産になったという例も多々あるわけです。
――今の日本のアート市場では、若いコレクターが増加し、活況を呈しています。一時的なバブルであるのか、今後の市場拡大につながっていくのか。どのように思われますか。
日本のアート市場が盛んになるのは歓迎です。SBIアートオークションを中心とした国内のオークションでは、新たに登場してきたミレニアル世代(30〜40代)のコレクターが買い手の中心で、美術史やコンセプトが優れた作家より、イメージ先行の、わかりやすいかわいい系の絵画が人気を集めています。
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