行列できない時代の「ヒット商品」の生み出し方 なぜ人々は並ぶのか、どうやって売れるのか

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このように、行列や混雑が持つプラス・マイナスの側面のバランスは、新型コロナウイルスの感染拡大によって大きく変わり、マイナス面への注目が大きくなったと言える。

2020年10月に発売になったiPhone12や同年11月に発売となったプレイステーション5は、新型コロナ感染拡大下の大型商品と言えるが、これらの発売開始の際に大行列がニュースとならなかったことは記憶に新しいだろう。

人が集まることが感染拡大につながることから、店舗側が大行列を形成するような販売手法を控えた可能性は高い。一方で、従来であれば発売日の朝のニュースからワイドショーなど、さまざまなメディアでニュースとなった大行列の光景が今回は存在しないことから、宣伝という視点では、行列の代わりに発売日の報道を盛り上げる何かが必要となる。

今回、そうした状況下からソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE社)は、写真撮影で「映える」ライティング演出を施した屋外展示によるプレイステーション5のローンチイベントを行った。

神田明神のライトアップ

SIE社は東京・秋葉原にほど近い神社・神田明神の境内をブルーのライティングで彩り、これを見るために多くの人が訪れた。神田明神はコンピュータ産業やキャラクター・コンテンツなどとの親和性が高く、東京を代表するランドマークでもある。さらに神社という特性から広い境内を持ち、屋外での展示も可能で、来訪者の密度も低く安全性が確保できて、撮影にも適していることから選ばれたと考えられる。今やテレビから、SNSを通じた情報の拡散が重要になったとも言える。

このような宣伝は各地で行われており、ロンドンでは地下鉄オックスフォードサーカス駅周辺でプレイステーションで使われている○×□△の形の地下鉄の看板を設置するなどのコラボレーションが行われた。こうした宣伝は、メディアでの報道はもちろんのこと、これらを見に行った消費者がSNSに写真を投稿することで広まることへの期待があることは明らかである。

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