行列できない時代の「ヒット商品」の生み出し方 なぜ人々は並ぶのか、どうやって売れるのか
2006年11月11日にプレイステーション3が発売された際の東京・有楽町のビックカメラの大行列は「物売るっていうレベルじゃねぇぞ!」という言葉とともにネットで流行し、今でも新商品の販売での大行列の際に思い返される話題となっている。
特に同店舗には約1000台の入荷があり、朝5時から並ぶことできたが、1時間経たずに整理券の配布が終わる勢いであった。このようなニュースは、発売前にはあまり関心がなかった人にさえ、人気商品であることをイメージ付けるものとなったと言える。
当時この「物売るっていうレベルじゃねぇぞ!」という言葉が報道され話題となった鈴木さんに、どうして早朝から行列に並んだのかをインタビューした。
鈴木さんによると、「初代のプレイステーション発売の頃は半導体部品の企業で働いており事前に周囲の関心も高かった。当時購入に成功した同僚はそれを会社に持ってきて自慢しており、ヒーロー扱いだった」「プレイステーション3はBlu-Ray Discの再生が可能でHDMI端子で出力できた」ことが購入の動機とのことだった。
このように、当時も周囲で人気の商品であることが購入意欲を高める一因であったことが伺える。
現在はSNSも普及しており、当時と比べて写真をネットに上げることも容易になっていることから、参加している人たちが自ら行列の写真を撮り、購入の喜びを伝えることなども大きな宣伝となってきた。
混雑・行列の負の側面
一方で、混雑や行列は必ずしも人気というプラス面を伝えるだけではない。その商品を欲しいがゆえに、購入できないないことによる不快感が容易に拡散してしまう一因ともなりうる。
ファストファッションと人気のブランドとのコラボ商品の販売での店舗の大混雑や、人気のコンサートのチケットの発売日に販売サイトがつながりにくくなる現象は代表的な例であり、SNS上に負の感情を含んだメッセージが投稿されるなどしてその状況が拡散される。特に混雑の状況が拡散されることは新型コロナ感染拡大下の現在の状況ではマイナスのイメージを引き起こしてしまう。
また、購入が難しいことは、ネット上での高額転売が発生し、そのためにさらに購入が難しくなるという悪循環を引き起こすなど、別の問題を引き起こしてしまう要因ともなりうる。
店舗での販売の際にそれを買い求める人たちが一斉にレジに押し寄せるなど、現在求められている「密にならない環境」とは逆の事態が発生してしまうことも十分にありうる。「みんなが持っている・欲しいと思ってるものを自分も欲しい」「持っていることを人に自慢したい」など動機はさまざまだが、これらは時に暴走する可能性を秘めている。
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