「証券化商品の価格決定に格付けを使うのは筋違い」 クラークソン・ムーディーズ社長

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 --金融当局との規制などに関する話し合いは進んでいますか。

市場へのどういった解決策が提供できるか、先行してさまざまな話に臨んでいる。規制当局には、これまで分析手法に格付けが用いられることが、どれほど市場にインパクトを与えるかをそれほど認識していいなかった面もあるので、これを確認してもらえるのはいい機会だ。  
(聞き手:山崎豪敏、鈴木雅幸 撮影:今井康一 =週刊東洋経済)

profile
米ノースカロライナ大学で法学博士号、フェリスステート大学で会計学士および会計学修士を取得。会計士、弁護士として勤務した後、1991年ムーディーズに米国ストラクチャードファイナンス統括マネジングディレクターとして入社。2004年執行副社長、07年から現職。51歳。


●格付け会社を読み解くキーワード

格付けの「遷移」と「見通し」
 「遷移」とは格上げ・格下げの方向性。通常、遷移の見直しに入った場合、3カ月以内に結論を出すのが目安。これが「見通し(アウトルック)」になると、18カ月先が目安となる。

格付けスケール
 格付けの符号を表す。ムーディーズでは「Aaa」、S&Pでは「AAA」と大文字で記す。現在、ムーディーズでは事業会社と同一だった金融証券化商品の符号見直しを検討している。

モノライン
 金融保証保険業務を専門に扱う保険会社で「金融保証会社」と訳す。地方債や資産担保証券などの金融証券化商品などが保証対象。債券発行者(債務者)が債務不履行に陥った場合、モノライン会社が約定どおりの元利支払いを行うことを条件に、債務者から保証料を徴収する。
 現在市場では資本不足に伴うモノライン会社の格付け変更が注目されており、一時、著名な投資家ウォーレン・バフェット氏(写真)が救済に乗り出したが、モノライン各社の同意が得られず救済策を撤回している。また、最大手のMBIAは証券化商品の保証から撤退する意向を固めた。

CDO、SIV
 CDOとは債務担保証券。サブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)などが原資産に組み込まれていたため格下げが起こり、金融市場の混乱を増幅した証券化商品。SIVは銀行などを実質親会社とする、レバレッジ(テコ)のかかった投資会社。CDOなどで運用していたため損失や資本不足が起こり、結果的に銀行の損失規模を膨らませる要因となった。

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