「証券化商品の価格決定に格付けを使うのは筋違い」 クラークソン・ムーディーズ社長


 そもそも、サブプライム関連商品は1980年代半ばから歴史があり、06年に至るまで情報の質は、事業法人に対する格付けよりも遷移(格上げ・格下げ)幅が小さく、安定的なパフォーマンスだった。06年を契機に住宅市場が下落してしまった。サブプライム関連商品の情報を出してきた引受会社が「この情報は正しい」という表明保証をすることが義務づけられているが、今後はこの情報の正確性が担保できない状況に備え、第三者機関の情報による検証など、他の手段で情報の正確性を担保することを検討する。

もっとも、劣悪な情報しか提示しないところは、証券化商品のすべての発行体の中でも3分の1に限られる。その他3分の2の発行体は良質な情報を提供している。

--現在、クレジット市場は凍りついています。サブプライム関連・派生商品の適正な価格形成が必要ですが、格付け会社としてどのような役割が担えますか。

標準となるような価格体系を決める評価手法がないので、売り手が潜在的に持っている先高感から売り渋る一方で、買い手も買い控えている。こういった膠着した状態が続いている中、格付け会社としては、価格の体系やメカニズムを機能不全から適正に機能させる手伝いができる。

ある一定の範囲で価格に代わるものを提供することだ。たとえばDCF(ディスカウント・キャッシュフロー)というモデルがある。これは信用市場における安定的な金利状況を見たうえで、証券の払い出される受け取り益を含めて、どのような想定ができるかということに基づいている。ただ流動性に伴って起こるプレミアムは考慮されていない。加えて、当社の別会社が日中の比較的流動性の乏しい価格などを出す、二つの会社を買収した。こういったものは市場の値付けへの手助けにはなるだろう。だが、これをあえて市場に推奨する考えはない。

金融証券化関連商品の追加情報の提供が必要

--サブプライム関連・派生商品の格付けスケール(符号)を見直す予定があるようですね。

サブプライム関連・派生商品(ストラクチャード物)の格付けは、事業法人や金融法人の格付けと同じ符号をつけているが、両者を対比すると、ストラクチャード物は一般法人に比べ遷移の相関性が高く、短期に遷移が大幅に動く特徴がある。このため、新たな格付け符号に対する意見募集をしているが、意見の3分の2は格付け符号の変更を望んでいない。むしろ追加的な情報を得たいという要望が強い。

--格付けモデル自体が古いとの見方もあります。モデルそのものを見直す考えはないのですか。

市場から声高の要望がないかぎりは変えるつもりはないが、追加的な情報提供は拡充していきたい。ストラクチャード物の格付けは80年代に始まったとはいえ、絶えずアップデートをしている。モデルが古くならないように絶えず既存のモデルを更新しているから古いことはない。サブプライム関連商品についても、モデルの相関性の分析や仕組みを含めて、更新の途上にある。

--市場ではモノラインの格付け遷移に依然注目が集まっています。

格上げか格下げかということよりも、モノライン自体がどのような資本増強をしたいのか、あるいはトリプルAを維持したいのか、ということを判断する立場にいる。トリプルAをあきらめたモノラインがいたとしても、新しいビジネスは難しいが、既存ビジネスから得られる収益は続く。現在、資本増強していないモノラインも、時間の経過とともにポートフォリオが整理されることで、結果的に資本増強したのと同じ状況になることを目指しているのだろう。

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