「証券化商品の価格決定に格付けを使うのは筋違い」 クラークソン・ムーディーズ社長


 --サブプライム関連・派生商品の価格付けに、格付けを使っているとの認識はなかったのですか。

われわれはそれを意図していなかった。信用格付けとは、満期まで持ち切る投資家に対して、満期時の元本とその間の金利を確保することのできる確率を示すものだ。

--格付け会社が信用補完において、必要以上に大きな役割を担ったと認識していますが……。

格付けはあくまでも意見である。現在得られている情報を基に、われわれなりに将来を想定して出している意見であって、保証でもなければ保険でもない。

格付け会社は、限られた範囲で活動している。というのは、統計的にサンプリングをし、それをモデルに組み上げることにより格付けという形で結果を出しているためだ。われわれはデューデリジェンスの役割も担わされてはいない。

確かに、06年までは、住宅市場の参加者それぞれが自らの役割を非常によく果たしており、適正な値付けをするというメカニズムが働いていたと思う。それが06年を契機に市場が変わってしまった。

追加的な商品を市場に投入するに当たって、格付けに必要以上に依存していた面があったのではないか。信用格付けがわれわれの意図する意見ではなく、価格の変動というものに使われたことは、今後、改善すべきポイントとして浮き彫りになった。

格付けはある一定時点でのデータポイントとしての役割はあると思うが、格付け自体が価格に代わるものではない。これは同じトリプルAであっても、価格の変動に差異が見られることからもいえる。リスクに対する許容度が地域、商品等によって異なることを反映しているためだ。

--一連のサブプライム問題からムーディーズは何を教訓として学んだのですか。

歴史的な経緯にかんがみて、過去に付与した格付けを、格下げせざるをえなかったことを残念に思っている。今後、格付けを安定的に推移するためには、改良すべき点が多い。

まず適正に格付けを付与するためには良質な情報を得て、これを格付けのモデルを調整する際に、いかに反映させていけるかが改善点だ。ここ数年間、われわれが望んだほどに正しい情報が入ってこなかった。これは住宅市場が過熱したため、できるかぎり多くの与信を行うことに躍起になった中小住宅ローン会社が現れたためだ。そこには金融当局による規制の網がかかっていなかった。

当社としては、住宅ローン融資会社に関しては、過去の実績などにより分類をして分析に差異をつけているが、これをより厳格にするべきであったということは、一つの教訓だ。監査法人などの第三者機関を使って正しい情報を公表しているかを、事後的に検証していくことも必要になってくる。格付けモデルやアプローチ(格付け手法)が適正であったとしても、そこに共有される情報の正確性やその堅牢度が担保できなければ、モニタリングしていても課題を残すことになると痛感した。

3分の1の発行体が劣悪な情報を提示

--情報の質が不完全なまま格付けをしていたということですか。

そういう面が一部にはあったかもしれない。

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