出生前診断という言葉を聞いたことはあるでしょうか? これは、その名のとおり、赤ちゃんが産まれる前に異常がないかを調べる検査です。
ただ、一般的に検査が行われているアメリカなどの諸外国に比べて、日本で出生前診断を行う妊婦はかなり少ない現状です。この理由としては妊婦健診でこのような検査について説明がない、自由診療であるため高額である、出生前診断という言葉そのものに抵抗があるなど、さまざまな理由があります。
確かに出生前診断は、異常がなければ安心して出産を迎えられる一方、疾患名がつくような異常があった場合には命の選択が問題となる両刃の剣でもあります。身体的な欠損については治療がありますが、いわゆる知的障害と診断されるような知能・精神の発達については根本的な治療法がありません。
授かった子どもであればどんな子でも大切に育てたい、一方、障害が事前にわかるなら自身や子どもの負担を考え、次の妊娠に……と、事前に子どもの疾患がわかった場合の命の選択についてはさまざまな意見があり、医学的にどれが正しいとは言えません。
しかし、すべての妊婦には「知る権利」があると思います。結果による選択はどうであれ、選択肢を増やすことは必要です。検査に異常があった場合どのような方針にするか、夫婦や家族間でよく話し合ってから受ける必要があるでしょう。
近年話題の技術「NIPT」とは?
さて、出生前診断とひとくちに言ってもその方法はさまざまです。母親の血液中の成分を調べる方法もあれば、羊水や絨毛(胎盤の一部)を採取する方法もあります。中でも近年話題になっている技術としてNIPT(新型出生前診断)というものがあります。
NIPTは、母体の血液内に含まれる胎児の染色体を測定する検査です。お腹に直接針を刺さずに、母親の採血のみで検査が可能であることから、流産などのリスクがなく安全であり、それでいて検査精度が高い(感度95%、特異度99%以上)ため注目されています。感度とは、疾患が陽性であったときに検査が正しく陽性と判定する確率です。特異度とは、疾患が陰性であったときに検査が正しく陰性と判定する確率です。
ヒトの形や機能をつくる「設計図」はDNAと呼ばれており、これは染色体という構造にまとめられて体の中に存在しています。NIPTでは、検査機械をとおして胎児の染色体の数や形を「直接」見ることができるため、通常2本1組の染色体の一部が3本あることによって起こるダウン症などの疾患がわかります。
さらに、近年では技術が進歩し、染色体の一部が欠けているかどうかまでわかります。欠けた部分はほんの少しでも、場所によっては体の一部が欠損する、知能の発達に遅れが生じるなどの先天性疾患が生じることが知られています。
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