資金・部員不足で窮地「大学新聞」学生らの苦闘 コロナ禍も追い打ち、それでも続ける理由
では、大学新聞はこれからどこに向かうのだろうか。教育ジャーナリストの小林哲夫氏(61)は「今の大学新聞には堂々とした姿勢が足りません」と言う。小林氏は30年以上、大学生の実態を追い続けている。
「バブル時代を経て、ポップカルチャーが学生に好まれるようになり、それに伴って大学新聞の記事もポップカルチャー化してきました。ミスコンの開催記事とか、面白そうなイベントが学内であるよ、とか。
それから、野球のリーグ戦などのスポーツ関連。大学の動きは伝えていますが、そういうイベント報道を軸にしたものに変わりました。『本当に学生が作っているの? 実は大学当局では?』と思わせるような広報新聞が多い気がしますね」
「せっかく学生がメディアを持っているわけですから、難しいかもしれないですが、例えば日本大学なら『アメフト問題』を学生目線で取り上げるとか、試みてほしかった。
また、慶應義塾大でミスコンの主催者に集団強姦容疑が問われる報道がありましたが、同大学の大学新聞はミスコン出場者を大きく紹介するなどの広報的な記事を出し続けているだけで、この問題を追及しませんでした。
同じキャンパスに通う学生だからこそ問題提起することができたと思います。気づかなかったとしても、大学ミスコンが社会で問題視されている現状を考えれば、『大学ミスコンは変じゃないのか?』という声を取り上げてもいいわけです」
裏口入学の斡旋問題を取り上げたことも
小林氏によれば、戦前から続く大学新聞は、その大学が社会の潮流と関連すること、社会で起きている大きな問題を学生目線で伝えることが使命だったという。例えば、有名大学の新聞はかつて、教授の裏口入学の斡旋問題を取り上げた。教授が受け取った謝礼を税務申告せずに脱税していたことや、大学自体の使途不明金問題にまで切り込んだことがある。
こうした姿勢は大学新聞から消滅してしまうのだろうか。小林氏は「悲観はしていません」と言う。
「その時代のやり方で一所懸命やればいいし、そのために僕たち大人を使ってもいい。大人を批判してもいい。だから、もっと堂々としてほしいなと思います。『こんな記事に書いたら将来、もしかしたらまずいことになるだろうな』といった気持ちが出てくることもあるでしょう。けれど、もうちょっとだけ思い切りやってもいい。私はそう思います」
取材:板垣聡旨=フロントラインプレス(Frontline Press)所属
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