北海道の激ムズ地名「重蘭窮」どうやって読む? アイヌ語の地名は基本的に地形を説明している
文字を持たない人々の言葉であっても、その話し手がいなくなった後に痕跡を残すことがあります。その1つが地名です。
かつて東北地方の少なくとも北半分にアイヌ語を話す人々が住んでいたと断言できるのは、そこに北海道と同じ、アイヌ語だと思われる地名が数多く残されているからです。
「北海道と同じ」とわざわざ言うのは、アイヌ語のように音の構造の比較的簡単な言語は、この制限を外すと語呂合わせのような感じで、いくらでも「アイヌ語地名」が認定できてしまうからです。
たとえば100年以上前から富士山のフジはアイヌ語だとか、阿蘇山(あそさん)のアソはアイヌ語だということが言われてきました。それに対するいちばん簡単な反論は、北海道にも火山はあちこちにあるが、1つもフジだとかアソだとかという山はないということです。
アイヌ語の地名は地形の説明
アイヌ語の地名というのは基本的に地形の説明です。襟裳岬(えりもみさき)の襟裳はエンルㇺというアイヌ語がもとで、「みさき」という意味です。知床岬(しれとこみさき)の知床も、シㇼ「大地」エトコ「~の先端」というのが語源で、要するに山の稜線が張り出しているところ。海の沖のほうまで張り出して半島になっているのが知床半島ですが、実は北海道の内陸地域にもシレトコと呼ばれる場所は何箇所かあります。
また幌内(ほろない)という地名は、石狩にも北見にも釧路(くしろ)にもありますが、ポロ「大きな」ナイ「川」ということで、「(周辺の川と比較して)大きな川」ということ。樺太の多来加湾(たらいかわん)(※テルペニヤ湾)に面した敷香(しすか)と呼ばれていた町は、現在ポロナイスクという名前になっていますが、このポロナイも同じ由来の名前。
1990年に私が行った時には、もうすでにアイヌは誰も住んでいないという話でしたが、ポロナイの名のとおり、大きな川が水をたたえて流れていました。
このように、同じ地形にはだいたい同じような名前がつけられるので、そうした地形と名前の組み合わせが見られれば、アイヌ語地名である可能性が高くなってくるわけです。
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