北海道の激ムズ地名「重蘭窮」どうやって読む? アイヌ語の地名は基本的に地形を説明している
東北地方の北部を強調しましたが、アイヌ語地名はそこにしかないということではありません。ただ、それより南に行くと、それらしい地名の数ががくっと減るので、本当にアイヌ語地名かどうか確かめるのが難しくなるということなのです。山田さん自身は新潟県に特徴的な「五十嵐(いがらし)」という地名について、アイヌ語かもしれないと言っています(註2)。
山田さんは新潟県内の3カ所の「五十嵐」「五十辺(いがらべ)」を実地検分して、インカルシにふさわしいところを見つけてきました。北海道のインカルシという地名は、インカㇻ「見る」ウシ「いつもするところ」という意味。
地名をなくすことは歴史を消すこと
小高い丘の上にあって眺望がきくところにつけられていて、そこで敵の軍勢とか魚の到来を見張ったところだと言われ、北海道北見の遠軽(えんがる)の語源もこれだとされています。
そうです。何か遠くのほうからやってくるかもしれないものを「見る」ところということで、インカㇻマッのインカㇻと同じ言葉です。そんな言葉が新潟県の丘の上に、さりげなくつけられていたのかもしれないのです。
近年、アイヌ語地名の復権が強く叫ばれるようになってきましたが、地名はそこに住んでいた人たちの存在の証であり、地名をなくすことはその人たちの歴史を消すことです。ひいては人々の心の中からアイヌという存在を消し去ることにつながります。そういった意味で、アイヌ語地名についての関心がもっと高まるように努力したいと思います。
(参考文献)
注1:山田秀三『東北・アイヌ語地名の研究』草風館(1993年)
注2:山田秀三「インカラ(眺める)地名物語」『東北・アイヌ語地名の研究』草風館(1993年)
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