「誤差脱漏」という得体の知れない項目にこうした意味づけを与えるのは、面妖なことと思われるかもしれない。確かにそうなのだが、日本の全世界に対する経常収支と資本収支および外貨準備増減の和は、必ずバランスしなければならないにもかかわらず、こうした大きな差が出てしまうのである。それは決して無視できる規模のものではない。そして国際収支表における「誤差脱漏」は、ケイマンなどのタックスヘイブンとの取引であると、一般に解釈されている(ブリテエィンコキャトリン、森谷博之監訳、『秘密の国 オフショア市場』、東洋経済新報社)。
日本はサブプライムバブルの共犯者
以上で次の数字を見てきた。国際収支表における特定2国間の経常収支と資本収支の差(前々ページ表のA、D)、BIS推計のキャリー取引(前々ページ表のB、E)、日本の国際収支表における誤差脱漏(前々ページ表のC)、アメリカのサブプライムモーゲッジ(前々ページ表のF)。
これらの数字の間には、正確な一致関係があるわけではない。しかし、A、B、Cはほぼ同じ規模であり、また、D、E、Fもほぼ同じ規模だ。
しかも、変化の方向において強い相関関係があることに注意が必要である。すなわち、02~06年の期間においては、日本から資金が流出してアメリカに流入し、サブプライムが増大した。そして08~09年には、AとDは減少し、CとFは逆方向になった。もう少し詳しく見ると、日本からの資金流出とアメリカへの流入、そしてサブプライム増が05、06年頃に大きく拡大し、09年に大きく縮小しているのだ。
したがって、これらは上述のような直接的関係によって結びついている可能性が高いのである。つまり、日本や中国が貿易黒字を拡大し、その一部がキャリー取引を通じてアメリカに流れ込み、サブプライムモーゲッジ証券化商品のバブルを拡大させたのだ。