(第10回)円キャリー取引とサブプライムのバブル


円キャリーによる日本からの資本流出

以上で述べた国際間の資金の取引は、「円キャリー取引」として行われた可能性が高い。「キャリー取引」とは、低金利国の通貨で資金を調達し、それを高金利国の通貨に換えて運用する投資手法を指す。日本は低金利国であるため、ヘッジファンドなどが円で資金を調達し、それをドルに換えて、サブプライム関連の高収益金融商品に投資した可能性があるのだ。

ところが、国際収支統計に「キャリー取引」という項目があるわけではない。したがって、これを定量的に追うのはきわめて難しい。ただし、いくつかの推計が試みられている。国際決済銀行の報告書は、次のような推計を行っている(Evidence of Carry Trade Activity,BIS Quarterly Review,September 2007)。

02年第2四半期から07年第1四半期の期間において、日本からカリブ金融センターに向けて、940億ドルのキャリー取引による資金の流れがあった。これは、ケイマン諸島などの金融センターで発行された円建ての債券を、日本の銀行が購入するものだ。調達された資金は、アメリカのヘッジファンドや銀行のSPV(シティグループなどが証券化商品に関連して設立した金融子会社)に向かったと考えられる。

なお、中国からカリブへの資金の流れもあった。そしてカリブからアメリカに向けて1410億ドル、イギリスからアメリカに向けて5140億ドルの資金供給がなされた。

実は、日本の国際収支表にも、キャリー取引ではないかと推測できる項目がある。それは「誤差脱漏」である。これは、02~06年の期間で、約10兆円の資金流出となった(前ページ表のC)。この額は、BIS推計による日本からカリブ金融センターへの円キャリーとほぼ同じである。

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