存在感を発揮する「本当に強い女子大」の共通点 安田女子大、武庫川女子大、昭和女子大の戦略

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昭和女子大では保育士や幼稚園教諭を輩出してきたが、そのマネジメントに特化した教育はこれまで手薄だった。

「待機児童解消で保育所は増えているのに、経営ができる人材の供給が追い付いていない。また消費の相談窓口にいる女性は多いけれど、経営にその視点は生かされているのかどうか。苦情はビジネスのシーズ(種)です。効果的な組織運営は、所属する人と人との強みをどう引き出すかという会社経営と同じ。その力をつけるリカレント教育の場としたい。実績を積み上げて、ゆくゆくはグローバルMBAに改組したい」と坂東総長は、立ち上げたきっかけと将来構想を語る。

2007年に学長として赴任した坂東真理子氏は、現在理事長・総長として法人全体の改革を推し進める (筆者撮影)

ベースにあるのは、女性が活躍できる「ブルーオーシャン」を探すことだ。かつて女性の働き方として推奨された保育士や幼稚園教諭、薬剤師といった「資格を取って働くこと」ではないという。

「家庭に入り、再就職する際に手に職があったほうがよい、という考え方では、同じプロフェッショナルでも『セカンドクラス』の資格になってしまう。医師や弁護士といった資格では決してない。それよりはリーダーを目指す女性を育てなければ。日本のメンバーシップ型雇用では、男性は資格を大学で取らなくても企業に入れば育ててもらえるが女性は違う」と坂東総長。

そして「人が必要だけれど足りない『ブルーオーシャン』へいかなければ。また、これまではグローバルに力を注いできた。でもコロナ禍により、これからはデジタルも重要だとはっきりしましている」と続けた。

学生たちにデジタルリテラシーを身につけさせる授業科目も順次、増やしていく。「数学の抽象概念を学ぶよりは、ITを使いこなしSNSの怖さを理解できる人材を育てるイメージです。女子大の存在意義はまだ十分にある。同じ能力の男性とは違う壁を、めげずに乗り越えなければいけません」(坂東総長)

時代に合わせたカリキュラムを作れるか

私事ながら筆者は東京都内の私立女子中・高出身だ。共学だと無意識のうちに、男子が委員長、女子は副委員長などサポートに回る傾向はあるのではないか。それが女子のみだと男性目線を意識せず、すべて自分たちで仕切ることになる。「女子校育ちは自立心が自然と養われる」というのが実感だ。それが大学だとどうなるのか、が今回の取材の出発点だった。

今回、紹介した3つの女子大は、いずれも中堅クラスとされてきたが、今や一流女子大としての評価が定着しつつある。いっぽう、変化に乗り遅れ、偏差値と志望者数を減らし続けている旧名門女子大は全国に少なくない。東京郊外にある女子大のOBで、50歳代の会社員は「同窓会がうるさくて変化を許容しない」と、保守的ゆえに母校が凋落している現状を嘆く。「女子のみ」という環境をプラスにとらえ、時代に合わせたカリキュラムを作れるかどうかが、生き残りの条件となるだろう。

藤澤 志穂子 ジャーナリスト

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ふじさわ しほこ / Shihoko Fujisawa

元全国紙経済記者。早稲田大学大学院文学研究科演劇専攻中退。米コロンビア大学大学院客員研究員、放送大学非常勤講師(メディア論)、秋田テレビ(フジテレビ系)コメンテーターなどを歴任。著書に『出世と肩書』(新潮新書)、『釣りキチ三平の夢 矢口高雄外伝』(世界文化社)。

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