「甲子園のアンチテーゼ」を行く高校野球の凄み 脱「勝利至上主義」で全員出場のLiga Futura

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新潟北高校の相馬謙司監督は「このリーグは選手を大事にするところがいいと思います。うちには初心者もいて、めちゃくちゃへたくそなんですが、なんでできないんだ、駄目じゃないかと言えば、じり貧になってしまいます。いいところを見て伸ばしていかなければと思っていたのですが、リーグ戦で少しずつ自信をつけています」と言う。

長野の丸山監督と新潟の相馬監督は、独自にリーグ戦のニュースを作って大会を盛り上げている。

実はLiga Futuraはリーグ戦を開催するだけでなく、指導者や選手が技術やコーチング、そしてスポーツマンシップなどを講座で学んでいる。リーグ戦が「勝利至上主義」と無縁なのは、こうした座学のたまものでもあるのだ。今年はオンラインセミナーとなったが、指導者はリーグ戦のライバルであるとともに共に学ぶ仲間なのだ。

試合には家族も観戦に来る。ソーシャルディスタンスを取りながら、熱心に選手を応援している。家族も楽しそうだ。生徒から話を聞いて、家族もリーグ戦の意義を理解している。

リーグ発案者が出合った「ドミニカ共和国の野球」

このリーグの発案者は、現在は少年硬式野球チーム「堺ビッグボーイズ」中学部の監督を務める阪長友仁氏だ。

「堺ビッグボーイズが中心となり理解ある中学チームで『フューチャーズリーグ』というリーグ戦を行っていたのですが、選手たちが積極的になるなど良い部分がたくさん見えたので、これは高校でも導入すべきだと思って、高校指導者の先生方に働きかけたんです」

阪長氏は新潟明訓高校時代に夏の甲子園に出場、本塁打を打つ。立教大学に進み主将も務めた一流の野球人だ。卒業後はサラリーマン生活ののち、JICAなどで海外での野球指導に従事するうちに、子どもの可能性を最大限に引き出そうとするドミニカ共和国の野球に出会い野球観が変わった。

帰国後は、少年野球の指導者となるとともに、ドミニカ共和国の野球の考えを知らしめる講演活動を始めた。ドミニカ共和国への研修旅行もたびたび実施している。こうした活動で知り合った高校指導者たちが中心となってLiga Futuraが始まったのだ。

「3つの府県で独自にやっていますが、理念は共有しています。リーグ戦をすることも有意義ですが、同時に低反発金属バットや球数制限などを取り入れたことも重要です。子どもたちにとっていいと思うことを毎年、アップデートしているんです」

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