南紀白浜空港が見違えるほど変わった決定要因 周回遅れからトップ走者に躍り出た「やる気」

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岡田社長は、街全体を「テーマパーク」ととらえている。“関所”としての空港の安全を守るだけでなく、そこから派生する情報を伝え、人をつなぎ、おもてなしまでを、空港会社の役割だと自認する。

地方空港の立て直しは「大変だけど、ロマンがある。切り拓く面白さがある」と語る岡田社長=2020年12月18日、南紀白浜空港(筆者撮影)

外需獲得できる公共インフラ

新型コロナの流行が本格化し始めた昨年3月には、岡田社長自ら旗振り役となって、旅行者の動線を考慮しながら25カ所ほどのホテルや観光施設に抗ウイルスコーティングの施工を呼びかけた。

「安全安心を勝ち取って、和歌山の注目が引き上がったらここから一気に抜け駆けしてやろうと。やはり、お客さんの戻りは早い」

活気づく地域の取り組みは、旅客数の激減に苦しむ航空会社にとっても救世主となった。JALも運賃引き下げなどで呼応し、送客を後押しした。

岡田社長はもともと、土木技術者で日本道路公団の出身。九州地方の高速道路建設に携わったほか、その後コンサルティング会社で地方のバス会社再生や関西国際空港の民営化などを手がけた。

日本全国にある50以上の地方管理空港はほとんどが赤字で、南紀白浜空港も年3億円を超える赤字を抱える。経営改革は容易ではないが、「もし、南紀白浜空港の赤字を少しでも解消に近づけることができれば、地方空港をもつ全国の自治体に夢と希望を与えられる」と語る。

道路や橋梁、港湾など数ある公共インフラのなかでも、「空港というのは唯一、外需をとってこられる貴重なインフラ。地域の成長をドライブできる」という魅力もまた、経営参画への意欲を駆り立てた。

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