南紀白浜空港が見違えるほど変わった決定要因

周回遅れからトップ走者に躍り出た「やる気」

南紀白浜空港の2019年度の乗降客数は約17万7000人で過去最高を更新している。都市部から近い、ビーチや温泉地に近いという立地のよさが売りなら、空港ができた50年前から条件は変わらないはずだ。決定的な違いはやはり、岡田社長の存在と「やる気」だ。

「さっき、到着口でわたしが出迎えたのは、地元の商工会議所の会頭。そして次にこっちで合宿しながら仕事をする大手新聞社の幹部たち、そのお迎えの人が来ていたのでこんにちはと。空港の出入り口が情報と人の交差点であり、関所。会話をしていると、そこからいろんなことがつながる。だからいつも発着時にロビーに出ています。だれも、僕の顔を盗んで白浜入りはできませんよ」と笑う。

到着便から出てくる旅行客を出迎える南紀白浜エアポートの岡田信一郎社長=2020年12月18日、南紀白浜空港(筆者撮影)

南紀白浜エアポートのホームページには、企業と連携したサービスの実証や、新規事業、イベントに関するニュースリリースが2019年4月の民営化以降で37件、コロナ禍に見舞われた昨年1年間だけでも13件掲載された。

テクノロジーの社会実装を先駆ける

中でも注目されたサービスの1つに、NECが提供する顔認証によるキャッシュレス決済の実証実験がある。施設単体で実証する事例はあるが、空港ビルから域内のホテルや観光施設など複数の事業者で連携するケースは初の試みだという。

「テクノロジーを持っている企業にとって、社会に広めるための実装の実例が欲しいけど、地方でやらせてくれるところはなかなかない。でも、ここに投資をしたいと思わせる、いろんな企業がこの地に目をかけてくれることが大切。NECから相談を受けて、すぐに調整に動きました」

フットワークの軽さとワンストップの調整能力の高さを聞きつけ、さまざまな企業関係者が岡田社長を訪ねてくるようになった。

訪問者には、より快適に充実した時間を過ごしてほしい。「山があって海があって、いいですよというだけではだめ。コーディネートする人がいないと旅行者はそのよさを味わえない」との思いから、移動から滞在、アクティビティーの提案まで一手に担えるよう、エアポート社は旅行業の免許を取得した。三菱地所が町内で手がけるワーケーション施設の管理者にも名乗りを挙げ、誘客のための情報発信に力を入れる。

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