ANA、コロナ禍でも国際線を増便する意外な理由 12月中旬に中国・深センへ新規路線が就航した

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成田―深セン路線の初便で接客するANAの地上職員。わずか13人の乗客だったため、接客時間はあっという間だった(記者撮影)

国内航空最大手のANAホールディングスが逆風にあらがい、新規路線の開設に踏み切った。

ANAは12月14日、成田から中国・深センへ定期直行便を就航した。日系航空会社による同路線への就航は初。当初は2020年3月末から羽田発着の週7便で就航予定だったが、両国政府による空港や便数の制限を受け、成田発着の週1便での開始となった。

深センは中国大陸の都市で上海・北京に次ぐ規模のGDP(域内総生産)を誇り、同国の通信機器大手ファーウェイやネットサービス大手テンセントなども本社を構える。ハイテク製品の工場や、スタートアップ企業が非常に多く、一定の需要が見込めると判断した。

初便の乗客はたった13人

ただ、期待とは裏腹に就航初日は寂しい出航となった。往路の初便は使用した246席仕様の機材に対し、乗客はたった13人と、利用率は10%にも届かなかった。コロナ禍とはいえ、それ以前まで国際線の平均利用率が75%前後で推移してきたことを踏まえると、かなり厳しい水準だ。

ANAは航空需要の低迷により、直近の2020年4〜9月期決算で2809億円の営業赤字に転落(前年同期は788億円の黒字)。この状況にもかかわらず、国際線を増やすのはなぜか。

理由の1つが片道の渡航需要だ。往路の利用客が少なかった深センへの初便だが、日本に戻る復路の予約数は130人超と座席数の50%を上回った。乗客の多くは日本に留学する中国人だ。

ANAで路線戦略を担当する山本岳マネジャーは、「平時は(短期間で)往復する需要が中心だが、海外渡航者に隔離期間のある今は、帰りの日を決めない片道の利用ばかりになった」と話す。実際、11月にANAが運航した上海と広州、青島の中国3路線の現地発の利用率は90%前後に上る。

ANAは専用便もフル活用して貨物収入の確保を急ぐ(記者撮影)

もう1つが、旺盛な貨物需要だ。世界中の航空会社が旅客需要を見込めず大規模に国際線を減便した結果、旅客便の貨物室を活用した輸送の供給が減少。輸送単価が上昇している。2020年4~9月期におけるANAの国際貨物事業も、輸送量は減少したものの、単価が前年同期比88.9%増となったため、収入は同0.6%減と前年並みの水準を維持できた。

その結果、普段は大部分を旅客で稼ぐ1便当たりの収入において、貨物は旅客と同等かそれをしのぐ場合もあるという。深セン路線でも日本を経由し、アメリカへスマホやタブレット端末など電子機器を輸送する需要が旺盛で、初便の復路は貨物がほぼ満載だった。

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