「平日朝のカウンターは水分補給もままならないほど行列が絶えなかったが、羽田はこれまでと比べ物にならないくらいがらがらになってしまった。人を半分に減らしても業務が回ってしまう」
羽田空港に勤める、ある航空大手の地上職員はそう語る。
3月6日。金曜日の夜というのに、羽田空港国際線ターミナルの客足はまばらで、カウンターでは職員が手持ち無沙汰で雑談していた。普段は満席に近い国内線も、空席マークが目立っている。
中国路線などを相次ぎ減便
中国政府は1月27日から海外への団体旅行を禁止し、東アジア路線の観光客需要が急減。日本政府も2月下旬にテレワークや各種イベントの自粛を呼びかけ、国内の旅行・ビジネス需要は停滞している。
日本人の海外移動も制約されている。インドが3月3日以前に発給された日本人の入国ビザを無効化するなど、3月9日午前7時時点で27カ国が日本からの入国を制限。入国後に行動制限措置が取られる国は63カ国にのぼる。航空業界に吹くコロナウイルスという逆風は日に日に強さを増している。
こうした状況を受け、ANAホールディングス傘下で国内最大手の全日本空輸は、19の中国線を徐々に縮小し、全路線で運休か部分的な減便を実施。東アジア・インドの9路線もほぼすべての路線で同様の措置をとった。
日本航空(JAL)も、中国を全10路線で運休または減便を決め、東アジア・インドの全10路線も平常運航していない。
コロナウイルス前の航空業界は順風満帆だった。リーマンショック後の2010年3月期のANAの売上高は1兆2284億円だったが、国際線の拡大と変動運賃制による客単価向上が効き、2019年3月期には2兆0583億円に拡大した。
2010年に経営破綻したJALはここ数年、不採算路線の整理が落ち着き、売上高は約1兆3000億円前後で推移。2019年3月期の売上高は前期比7.5%増の1兆4872億円と飛躍の兆しが見えていた。JAL関係者は「国際線は搭乗率が80%割れだと、空席が多いという感覚だった」と振り返る。
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