ところが、米中貿易摩擦が両社の成長に水を差した。貨物事業だけでなく、旅客便でも出張需要が減少。ANAは2019年10月、JALは2020年1月にそれぞれ2020年3月期の業績見通しを下方修正した。
そこに追い打ちをかけたのが新型肺炎だ。1月末の会見でJALの菊山英樹専務は、「2月は中国路線で約25%の予約キャンセルがあった。SARS(重症急性呼吸器症候群)などのときと比較しても(業績の見込みは)かなり厳しい」と表情を曇らせていたが、予感は的中。東アジア路線の大規模な減便を余儀なくされている。
約11兆円の航空輸送需要が失われる
国際航空運送協会は3月、コロナウイルスの影響で2020年に全世界の航空業界における収入が最大で1130億ドル(約11兆円)失われるという推計を発表。これはANAホールディングスと日本航空両社の売上高合計(約3.5兆円)の3倍超に相当する。
ANAの中国線予約数は2月で前年比8割減少、3月に入っても同9割減のペースが続いている。JALの2月の国際線利用率は前年比8.7%減の71.1%となっており、3月も「需要が減少している」(JAL広報)という。
新型コロナの影響は、堅調だった国内線にも広がっている。ANA、JALともに3月の予約数は前年比で約4割減少。ANAではとくに北海道発着路線の予約数が約5割減で、同社の客室乗務員は「ここ2週間、500人乗りの羽田―新千歳便で乗客が50人程度のときもあった」と打ち明ける。
空港テナントも苦戦を強いられている。成田空港では2月1日から22日までの空港内テナント売上高が前年比で36%減少。成田国際空港の田村明比古社長は「中国のお客様の購買単価は高い。昨年の春節が2月だったこと(の反動)もあるが、かなりの部分で新型コロナウイルスの影響がある」と語る。
2019年3月期の羽田空港の免税店売上高4949億円のうち、45%は中国人が占める。羽田空港のテナント店員は「ディスカウントストアやアパレル系など、店舗によっては2月の売り上げが前年比50%減だった」と明かす。
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